腸内細菌を改善するために乳酸菌を取ればいいということがよく言われていますが、それだけでいいのでしょうか。最近の研究は、それだけではだめで、他の食材(食物繊維など)を同時に取ることが必要であることが分かってきました。

食べてそのまま腸内で生きて働く菌をプロバイオティクスと呼びます。一方、善玉菌が働くのを助ける食べ物の素材を、プレバイオティクスと呼びます。

これまで一般にはプロバイオティクスばかりが大事と言われてきました。確かに、善玉菌である乳酸菌やビフィズス菌を腸内に入れると、腸内を弱酸性にし、悪玉菌の繁殖を防ぐことは事実です。ただし、この考え方自体は、100年前のメチニコフの時代から既にあったものです。

最近の理化学研究所や東京大学、慶応義塾大学の研究で、野菜などの食物繊維が小腸で分解されずに大腸に到達すると、腸内細菌により酪酸が生み出され、腸を元気にしたり免疫を整えることが分かってきたのです。つまり、プロバイオティクスとプレバイオティクスの両方を取る必要があるという新たな考えが出てきたのです。さらに運動をすることでこの効果を高めることができることも分かってきました。

さらに我々の研究で、麹(こうじ)に含まれるグリコシルセラミド(これ自体は脂質の一種です)も同様に大腸に到達し食物繊維と同じ挙動を示すことが分かってきました。現在、科研費で麹グリコシルセラミドが大腸に到達したときに腸内細菌の組成や代謝がどのように変わるかを調べています。いずれにせよ、発酵食品にはグリコシルセラミドも食物繊維も善玉菌も豊富ですので、プロバイオティクスもプレバイオティクスも含まれていることになります。