今回の新型コロナウイルスに関する一連のマスコミの報道を見ていて、一般の方にも広まっていないことがわかり、我々研究者の努力不足を痛感していることがあります。

それは、何が信頼できる情報かという基準です。信頼できる医学情報は、偉い先生が言ったとか、有名な大学の教授の本に書いてあったとかではありません。信頼できる医学情報は、システマティックレビューで効果が確認された情報です。

これは1人や2人の偉い先生が言ったかどうかではなく、何十、何百人もの科学者が、数千人、数万人の患者を診て、下した診断の結論であり、まさに昔で言えば仙人の視点とでも言えるものです。

例えば1人の人がある食品を食べて病気が治ったからと言って、その人がたまたま特殊な体質だったかもしれないし、運がよかっただけかもしれません。他の影響をなくすためには、簡単に書くと双子の一方にその食品を食べてもらい、もう一方にその食品を含まない食品を同じ期間食べてもらい、同じ生活習慣で暮らしてもらった後、観察する必要があります。疑似的にこれと同じことをするには何千人もの調査が必要になります。

このようにシステマティックレビューには膨大な研究が必要で、まだ研究が進んでいない場合「効果が確認されていない」と記述するしかないこともありますが、「効果がないと結論された」とはまったく別の意味になります。判断保留ということです。まずは効果が確認された医療技術や薬、食品を押さえるべきだと思います。コクラン・システマティックレビューなどが有名で、誰でもウェブサイトで見ることができます。