日刊スポーツのニュースサイト、ニッカンスポーツ・コムです。


  1. 歴代受賞者と受賞作品
  2. 第23回主演男優賞 受賞発表記事

  1. トップ
  2. ファン大賞
  3. 関連ニュース
  4. 関連写真
  5. ノミネート一覧
  6. 歴代受賞者・作品
  7. 概要

主演男優賞ー妻夫木聡「悪人」

妻夫木聡
「悪人」で主演男優賞を受賞した妻夫木聡。彼のあまりのさわやかさに、自分のあまりの泥臭さに気づかされた撮影でした。(撮影・宮川勝也)

【受賞発表記事】

 俳優妻夫木聡(29)が「自分を捨て切って」挑んだ「悪人」で主演男優賞を受賞した。28日に東京・紀尾井町のホテルニューオータニで行われる授賞式で、裕次郎夫人のまき子さんから賞金300万円が贈られる。

 受賞の一報は新作の撮影帰りに聞いた。「泣きそうになりました。全身全霊尽くしたので、報われた気がしました」。

 特別な作品だった。原作小説に衝撃を受け、すぐに映画化権がどうなっているのかを調べた。初めての行動だった。映画にしたい、主人公・清水祐一を演じたいという思いだけだった。「思い返してみると、見たことのない自分を見てみたいという役者としての欲もあっただろうし、今のままじゃいけないなと思ってる自分もいたと思う。自分の中で転機をつくりたかったのかもしれない」と語った。

 「『ウォーターボーイズ』で日本映画に出会ったのは、間違いなく転機だったなあ。でも、転機なんて人生でそうそうないのは分かってます」と言うが、今回も間違いない転機になった。これまでと大きく違うのは、自分で働きかけ、つかみ取った転機だということだ。妻夫木の言葉で言えば「偶然じゃなく、運命的だった」。

 映画化権の所在が判明し、重いテーマだけに企画がストップしていたことが分かったが、妻夫木が祐一役を熱望していることで、企画は再び動き始めた。しかし、そこからが本当の「悪人」のスタートだった。

 解体工事現場で働く主人公・祐一は、閉塞(へいそく)した暮らしを送り、自己表現ができず、結果、殺人を犯してしまう。自己表現することを職業にする俳優とは、根本がかけ離れている。妻夫木は祐一に近づくため、工事現場で3日間黙々と働いてみた。物語の舞台である九州を1人で訪ね歩き回ってみた。「今回は、頭で考える芝居じゃなかった。積み上げてきた『妻夫木聡』を捨てないと何も始まらなかった」。理論や理屈はいらなかった。原作の吉田修一氏に「祐一にしか見えなかった」と言わせるほど、自分を捨て去った。

 妻夫木の「悪人」はこれだけでは終わらなかった。役から抜け切れなかったのだ。祐一に出会う前の自分が分からなくなった。「キックボクシングや英会話をやってみて『新しいものに挑戦して自分を磨いていこう!』みたいなノリにしてみたんですよ。でもいまいちで。実は、今も抜けてるのかどうか分からない。怖いですよね。今でも恐ろしいことしてたと思います。役者の人で自殺する人って考えられないって思ってたけど、何か、分かる気がした…」。深淵(しんえん)な世界をのぞいてしまったようだ。

 今月13日で30歳になる。「20代は吸収する時代。30代は別のスポンジも持ちながら、今までのスポンジからぎゅっと絞り出したい」。「悪人」に出会ったスポンジから出る一滴は濃密に違いない。【小林千穂】

[2010年12月2日 紙面から]

 ◆妻夫木聡(つまぶき・さとし)1980年(昭55)12月13日、福岡県生まれ。97年ホリプロ主催「超ビッグオーディション」で第1回グランプリを獲得し、98年にドラマ「すばらしい日々」で俳優デビュー、99年「GTO」で初映画。その後「ウォーターボーイズ」(01年)「ジョゼと虎と魚たち」(03年)などで高い評価を得る。李監督とは04年「69~sixty nine~」でもタッグ。その他「涙そうそう」「ザ・マジックアワー」「ヴィヨンの妻~桜桃とタンポポ」など。ドラマは「カバチタレ!」「ランチの女王」「ブラックジャックによろしく」など。来年2月は野田秀樹氏演出の舞台に出演。171センチ、血液型O。

 ◆悪人 土木作業員の祐一(妻夫木)は恋人もおらず、祖父母の面倒を見て過ごす青年だった。一方、佐賀に住む光代(深津)は、勤務先の紳士服販売店と妹と同居するアパートを往復する退屈な日々を送っていた。出会い系サイトで出会った2人は心を通わせるようになったが、祐一は殺人を犯していた。2人の逃避行が始まる。ほか柄本明、樹木希林、岡田将生、満島ひかりら出演。

主演男優賞・選考経過
 最多得票でノミネートされた妻夫木が、そのまま選ばれた。「妻夫木君は自分からやりたいとアピールして演じた悪人役。他の現場でもこの役が抜けなかったそうで、相当な苦労があったと思う」(品田英雄氏)、「この何年かは主役や脇役をやりながら脱皮して、今は映画界の中心にいる」(木下博通氏)。「孤高のメス」の堤真一、「春との旅」の仲代達矢らを退けた。
日刊スポーツ映画大賞
  「タイトル」監督 記事
作品賞 「悪人」
  李相日監督
受賞発表記事
授賞式記事
監督賞   三池崇史監督
  「十三人の刺客」
受賞発表記事
授賞式記事
主演男優賞   妻夫木聡
「悪人」
受賞発表記事
授賞式記事
主演女優賞   深津絵里
「悪人」
受賞発表記事
授賞式記事
助演男優賞   稲垣吾郎
「十三人の刺客」
受賞発表記事
授賞式記事
助演女優賞   蒼井優
「おとうと」
受賞発表記事
授賞式記事
新人賞   仲里依紗
「ゼブラーマン−ゼブラシティの逆襲−」「時をかける少女」
受賞発表記事
授賞式記事
外国作品賞 「ハート・ロッカー」
  ブロードメディア・スタジオ
受賞発表記事
授賞式記事
石原裕次郎賞 「THE LAST MESSAGE 海猿」
  羽住英一郎監督
受賞発表記事
授賞式記事
石原裕次郎新人賞   高良健吾
「おにいちゃんのハナビ」「ソラニン」ほか
受賞発表記事
授賞式記事
ファン大賞 「BANDAGE バンデイジ」 授賞式記事
石原裕次郎賞・石原裕次郎新人賞とは
 1987年(昭和62)に亡くなった、戦後を代表するスター石原裕次郎さんの遺志を引き継ぎ、日刊スポーツ映画大賞に併設。石原プロモーションが運営に全面協力している。その年に最もファンの支持を得て、スケールの大きな作品に贈られるのが石原裕次郎賞。裕次郎さんをほうふつとさせる将来性豊かな、映画デビュー5年以内の新人に贈られるのが、石原裕次郎新人賞。賞金は各300万円、100万円。




日刊スポーツ購読申し込み 日刊スポーツ映画大賞