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主演男優賞-妻夫木聡「悪人」

妻夫木聡
主演男優賞の妻夫木聡は表彰盾を授与する笑福亭鶴瓶(手前)を笑顔で見つめる

【授賞式記事】

 撮影からほぼ1年が過ぎた授賞式、妻夫木は「悪人」の紹介映像にじっと見入っていた。終了後、「うーん、自分で見ててもびっくりした。自分の顔じゃない」と、感慨深げに話した。共演の満島ひかり(25)が「最近も仕事が一緒だったんですが、妻夫木さんってこんなにきれいな顔してたんだと思った」と感じたほど、妻夫木は、「悪人」でイメージを捨て去った。

 98年に俳優デビューし、いい人、好青年を演じることが多かった。「(好青年と)言われるうちが花」と言う妻夫木だが、悩みがなかったわけではない。「自分では個性がないと思っていた。個性を出さなきゃだめだよ、って言われることが多かった」と振り返る。知名度、人気が上がったころ、強烈な個性派と言われた窪塚洋介が人気者になったことも、妻夫木=好青年のイメージを固めていったという。悩みや迷いを経て、たどりついたのが「個性がないのも個性。いろんな顔や色になれる」という役者としては最高の個性だった。

 自分が演じた役をじっと見つめていた妻夫木は、これまでのキャリアを思い浮かべたのかもしれない。ステージに上がると「役者を始めて13年目。ようやく脱皮できたかな、なんて。『好青年』から変わんなきゃいけない、って言われてたので、頑張って大人になろうと…」と苦笑いした。

 今月30歳になった。年齢を感じさせないようなあどけなさや少年のような表情が残り、会場の観客からは「かわいい」という声も上がった。しかし「悪人」で演じ切れたことが、変わらなければいけないのかという迷いを断ち切った。これから過ごす30代を「自由に、演じることを楽しみたい」。肩の力が抜けたようだった。  「実はまだ役から抜けているか分からない」と言うほど入り込み、間違いなく代表作になった「悪人」だが、「ゼロに戻れた。12年の集大成」と話すように気持ちは新たな方向へ向かっている。

 昨年の主演男優賞で、ドラマでも共演したことがある鶴瓶から表彰盾を受け取った。妻夫木は「魂のぶつかり合いだった」と話すほど共演が刺激になった。鶴瓶も同じ思いをしたそうで、妻夫木の新作は欠かさずに見て、電話などで感想を伝えてきた。「どんどんステージを駆け上っていくなあ。着実に、今までにない役者になっていく」。鶴瓶の言葉がまさに、妻夫木の今を表現している。【小林千穂】

[2010年12月29日 紙面から]

 ◆妻夫木聡(つまぶき・さとし)1980年(昭55)12月13日、福岡県生まれ。97年ホリプロ主催「超ビッグオーディション」で第1回グランプリを獲得し、98年にドラマ「すばらしい日々」で俳優デビュー、99年「GTO」で初映画。その後「ウォーターボーイズ」(01年)「ジョゼと虎と魚たち」(03年)などで高い評価を得る。李監督とは04年「69~sixty nine~」でもタッグ。その他「涙そうそう」「ザ・マジックアワー」「ヴィヨンの妻~桜桃とタンポポ」など。ドラマは「カバチタレ!」「ランチの女王」「ブラックジャックによろしく」など。来年2月は野田秀樹氏演出の舞台に出演。171センチ、血液型O。

 ◆悪人 土木作業員の祐一(妻夫木)は恋人もおらず、祖父母の面倒を見て過ごす青年だった。一方、佐賀に住む光代(深津)は、勤務先の紳士服販売店と妹と同居するアパートを往復する退屈な日々を送っていた。出会い系サイトで出会った2人は心を通わせるようになったが、祐一は殺人を犯していた。2人の逃避行が始まる。ほか柄本明、樹木希林、岡田将生、満島ひかりら出演。

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石原裕次郎賞・石原裕次郎新人賞とは
 1987年(昭和62)に亡くなった、戦後を代表するスター石原裕次郎さんの遺志を引き継ぎ、日刊スポーツ映画大賞に併設。石原プロモーションが運営に全面協力している。その年に最もファンの支持を得て、スケールの大きな作品に贈られるのが石原裕次郎賞。裕次郎さんをほうふつとさせる将来性豊かな、映画デビュー5年以内の新人に贈られるのが、石原裕次郎新人賞。賞金は各300万円、100万円。




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