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助演男優賞ー稲垣吾郎「十三人の刺客」

【受賞発表記事】

 SMAP稲垣吾郎(36)が映画「十三人の刺客」(三池崇史監督)で日刊スポーツ助演男優賞を初受賞した。稲垣は悪役初挑戦。冷淡な暴君を好演し「新境地を開拓した1年の最後に、こんなに素晴らしい賞をいただいて光栄だし、うれしいです」と喜んだ。

 稲垣が演じたのは、罪のない女性や子供を顔色一つ変えずに殺す将軍の弟。正義のために立ち上がった13人の刺客から命を狙われる。「静かなる狂気みたいなものが出ればいいかなと。13人の熱い男たちとの対比が出た方が面白いと思いましたし、この人なりにジレンマを抱えて生きてきて、僕の中では深い悲しみも出ればいいと思って演じました」。「静かなる狂気」が高く評価され、接戦続きの選考会では決選投票なしの圧勝だった。

 国民的人気アイドルだが、イメージを損なうリスクを伴う悪役に抵抗はなかった。「むしろすごくありがたかった。こういう悪役を自分ができるということを僕も気付かなかったですね。毎回、ヒーローしかできないのもつまらないしね」。主要キャストがそろった「十三人―」の製作発表では、初めて“アウェー感”も体験した。「面白かったですね。コイツを倒すためにオレらは頑張ってたんだ、という空気が伝わってきて(笑い)。今までみんなのゴローちゃんだったんで、何か気持ちいいですよ、逆に。快感ですね」。

 悪役初挑戦は「いい時期なのかな」と年齢的な理由も挙げた。「グループで支え合う力もあるので、冒険しちゃっても平気かなと」。不動の人気を誇るグループの安定感も、思い切ったソロ活動ができる理由と捉えている。

 数々の連ドラや映画に出演してきた。主演作や高視聴率を記録した作品もあったが、これほど大きな反響は初めてだった。中年の男性タクシー運転手に「良かったですよ」と声を掛けられた。共演した岸部一徳や松方弘樹ら名優にも褒められた。「日常生活の中でも業界の方にも言われましたし、やっぱり映画の力ってすごいなと思いましたね」と驚いた。

 出演中のフジ系月9ドラマ「流れ星」では、金のためなら妹の幸せを壊す兄を演じるなど悪役が続く。「この役から悪役イヤーになって、自分にとっては転機というか、新境地を開拓したようないい1年でした」。悪役開眼した「みんなのゴローちゃん」に対し、映像界全体から今まで以上に熱い視線が注がれている。【近藤由美子】

[2010年12月2日 紙面から]

 ◆稲垣吾郎(いながき・ごろう)1973年(昭48)12月8日、東京生まれ。87年ジャニーズ事務所入りし、88年SMAPを結成。89年NHK朝の連続テレビ小説「青春家族」に出演し注目される。90年に「さらば愛しのやくざ」で映画初出演。映画は「プライベート・レッスン」「シュート!」「パラサイト・イヴ」「催眠」「笑の大学」、ドラマは「二十歳の約束」「東京大学物語」「ブスの瞳に恋してる」などに出演。176センチ、血液型O。

 ◆「十三人の刺客」 江戸末期、明石藩主・松平斉韶(稲垣)の不条理な暴君ぶりは目にあまるものがあった。将軍の弟だけに、処分できないため、老中の土井(平幹二朗)は、お目付役の島田新左衛門(役所広司)に暗殺の密命を下した。島田は腕の立つ刺客を集めるが、斉韶に仕えているのは、かつて島田とともに剣を学んだ鬼頭半兵衛(市村正親)だった。ほか山田孝之、伊勢谷友介ら出演。三池崇史監督。63年の工藤栄一監督作品、片岡千恵蔵主演作のリメーク。

助演男優賞・選考経過
 稲垣が投票で過半数を獲得した。「現代的なクールさがあって、かえって怖い。演技かどうかは分からないが、三池監督は『地だ』と言っていました」(石飛徳樹氏)、「アイドルなのに、この仕事を断らなかった。やってみようという姿勢がいい」(乾瑞恵氏)。「今度は愛妻家」でオカマ役を演じた石橋蓮司や、「アウトレイジ」などの加瀬亮も、高く評価されていた。
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石原裕次郎賞・石原裕次郎新人賞とは
 1987年(昭和62)に亡くなった、戦後を代表するスター石原裕次郎さんの遺志を引き継ぎ、日刊スポーツ映画大賞に併設。石原プロモーションが運営に全面協力している。その年に最もファンの支持を得て、スケールの大きな作品に贈られるのが石原裕次郎賞。裕次郎さんをほうふつとさせる将来性豊かな、映画デビュー5年以内の新人に贈られるのが、石原裕次郎新人賞。賞金は各300万円、100万円。




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