スター俳優には2つのタイプがあると思う。

撮影現場に入ってきただけで空気が張り詰め、その場が引き締まる「緊張感伝播型」と、柔らかな空気をまとって周囲を包んでしまう「緩和包容型」。取材の経験や、これまで聞いてきた証言から考えてみると、前者の代表格は、高倉健さんや渡哲也さん。後者で思い浮かぶのが石原裕次郎さんだ。舘さんは、後者のタイプになると思う。

両タイプの違いがはっきりと出るのは会話の際の位置取りや姿勢だ。

健さんや渡さんと話している相手は背筋を伸ばし、程よい距離を取って正対する場合がほとんど。緊張感が、相手を自然にそうさせる。

対して舘さんは、相手との距離を自分から縮める。肩をたたいたり、握手をしたり、スキンシップも大事にする。正対して向き合うというよりも、少し斜めの位置に立ち、視線に角度をつけて相手をリラックスさせているように見える。

取材の機会を通して印象的なのは、相手をリラックスさせようとするフランクな話し方だ。スター俳優特有のオーラは漂うが、それ以上にこちらが距離を縮めたくなる優しさや人懐っこさを感じる。

楽しめる空気をつくることで、互いに自然な気持ちになり、より良いものが生まれると信じている。それは、楽しくやる=いいかげんにやる、ということではない。緊張から生じる躊躇(ちゅうちょ)や必要以上の抑制を取り除き、自分や相手、現場全体を柔らかな空気で包み込む。舘ひろしの流儀だ。【松田秀彦】