どこか「古風」という言葉が似合う。
華やかで、スマートな印象も強いが、舘ひろしをよく知る人は、その性格を「コンサバ」「オールド・ファッションド」などという言葉で表現する。「コンサバ」とは「保守的」などの意味で使われ、「オールド・ファッションド」は「古き良き時代のもの」という意味でも使われる。
時代の流れに合わせ、めまぐるしく変化する芸能界。変化に寄り添うことも大事だとは思うが、あわてず自分を貫く姿が輝きを放ち続ける原動力になる場合もある。その典型が舘さんではないだろうか。
例えば、人との向き合い方。若い頃は、バイクチームを率いて流行を生み出し、ロックバンドで女性ファンを熱狂させた。しかし後年、人生の師と仰いだのは、硬派で落ち着いた印象の強い渡哲也さんだった。
憧れたのは、義を貫く生き方だった。「そうなりたいと思っても、きっと自分はなれない。それでも渡のように生きてみたいとは思うんだよね」と話す。渡さんは石原裕次郎さんとの絆を何より重んじ、1人の俳優として抱いた自分の夢をいったん脇に置き、石原軍団を引き継ぎ、維持するために俳優人生の多くの時間を費やした。派手なことが好きではなく、「西部警察」の撮影も「自分が今、裕次郎さんや軍団のためにやるべきこと」として黙々と取り組んだ。舘さんは、その背中を見つめ追いかけてきた。自分が目指す生き方が見つかったかのようだった。
渡さんがそうしたように、周囲の人とは丁寧に長く付き合う。仕事やプライベートで訪れるレストランはみな、何十年も通い続けている店ばかり。どんなに疎遠になっていた人でも、自分を訪ねてきたり頼ってくると「どうしたの」と話に耳を傾ける。
便利で使いやすいものが嫌いなわけではないが、そういうものはまた何かに取って代わられる。人間関係は、そこに頼らず、時間をかけて構築し、長く長く大切にする。着火まで時間はかかるが、組み方次第では、長く燃え続ける焚き火の薪のように。【松田秀彦】