第28回日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎賞(日刊スポーツ新聞社主催、石原プロモーション協賛)の授賞式が行われ、600人を超える映画関係者が集まった。7年ぶり2度目となる主演女優賞を受賞した綾瀬はるか(30)は緊張のあまり、登壇前に何度も席を外すなど、賞の重みをあらためて実感した様子だった。今日29日からは女優モードを切り替え、紅組司会を務めるNHK紅白歌合戦のリハーサルに突入する。
のどは渇き、ほおも紅潮した。出番を待つ綾瀬は、受賞者テーブルで落ち着かない様子で飲み物を口に運び、手を使って何度も顔をあおいだ。「主演女優賞」は作品賞、監督賞、主演男優賞に続く4番目の登壇。開会から約1時間。出番までに2度も席を立った。ところが、今度は化粧室に口紅を忘れてしまい、さらにソワソワ。スタッフから口紅を受け取り、少しだけ落ち着いた様子を取り戻した。
過去に主演女優賞を複数回受賞したのは、吉永小百合(3回)だけ。30歳になった今だからこそ、その意味を実感した。「名誉ある賞をいただいて光栄です。監督をはじめ、スタッフの皆さんが喜んでくれるのが何よりの幸せです。これからも、いろんなものに愛情を持って取り組みたい」。受賞スピーチはシンプルに、と決めていた。「長くすると、変なことを言って、訳が分からなくなるんです」。緊張対策のつもりだった短いスピーチが、ストレートな言葉となり、出席者の心に刺さった。
受賞者テーブルの円卓では「海街-」で妹役だった長沢まさみ(28)広瀬すず(17)と並んで座った。責任感の強い4姉妹の長姉を演じた綾瀬は、この日の受賞スピーチもトップバッターで重圧を感じた様子を見せた。それだけに、席に戻るとホッと息をついた。出番前、のどを通らなかった食事に舌鼓を打ち、目の前には空の皿が3つ。長沢、広瀬と「おいしいね~」と目を合わせた。授賞式最後の記念撮影では、もらった盾を見失ってしまい、アタフタした。慌てる様子を見た長沢は「綾瀬さんと会うといつも面白いんです」と、ほほ笑ましく振り返った。
出席者を和ませた年の瀬の「はるか劇場」は、まだ終わらない。今日29日から紅白のリハーサルが始まる。前日27日に分厚い進行台本が届いた。「これから読み込みます」と話したが「でも今はちょっとだけ、賞をいただいた幸せモードに浸りたい」。そう言ってお祝いのピンクのバラの花束をギュッと抱き締めた後、愛らしい笑顔で「情熱のバラ!」とおどけた。【森本隆】