第30回日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎賞(日刊スポーツ新聞社主催、石原プロモーション協賛)の授賞式が28日、東京・紀尾井町のホテルニューオータニで行われ、約650人が出席した。石原裕次郎賞は北野武監督(ビートたけし=70)の「アウトレイジ 最終章」。受賞への感謝と裕次郎さんへの思い、まき子夫人を交えた爆笑スピーチを展開した。
「あっ、浅野忠信の父です」。北野監督は思いもよらぬ名前を出しての自己紹介で、会場を面食らわせた。
照れ隠しと興奮の表れでもあった。北野監督は、裕次郎さんと会うことがかなわなかったことを「この世界にいて一番残念」と言う。2度目の石原裕次郎賞にも感激は薄れず「本当にありがたい」と喜んだ。
時代を作ったスター、裕次郎さんに今会ったら、どんな役をやってもらいたいかと聞くと、北野監督は「防衛省の幕僚で、反乱を起こすような役。裕次郎さんって純真で悪が嫌いないい役が多いけど、ぶっ飛んでて、正しいと思った信念で間違ったことを堂々とやっていくような、むちゃな男をやらせてみたい」と、楽しそうに話した。
湧き出る創造意欲は、裕次郎さんに重なるところがある。まき子さんも北野監督に「裕次郎さんが生きていましたら、たけしさんの役は裕次郎の役なんです。長生きしてたけしさんのように素晴らしい作品を作ってもらいたかったです」と言い、さらに「たけしさんにも、もうちょっと続けていただきたかった」と、完結した「アウトレイジ」シリーズの続編を希望した。
北野監督は「イメルダ夫人に言われたら、やるしかないな」と、豪勢に暮らしたフィリピンの元大統領夫人の名前を挙げて沸かせたが、これも照れ隠しだったのかもしれない。
「-最終章」では、ベテラン俳優の底力に驚いた。塩見三省(69)が脳出血で倒れ、西田敏行(70)が胆のう摘出手術を受けるなどしたため、撮影が危ぶまれたが、始まると2人はすごみを増した。北野監督は「映画にかける役者がこれほどすごいか、と見せつけられて本当に感動しました」、森昌行プロデューサー(64)も「役者さんに助けられた作品であることは間違いない」と話した。俳優や映画人が集まった授賞式会場で、より一層映画への思いを深めた。
昨年の受賞作「さらば あぶない刑事」の村川透監督(80)に「裕次郎さんは存在そのものがエンターテインメント。たけしさんはエンターテイナーのキング」と祝福され、舘ひろし(67)とは「おめでとうございます」とがっちり握手した。共演した松重豊(54)は「『北野組をやってる』と言うのは誇らしい瞬間。また誘っていただけることを願っております」。
賞金300万円の使い道について聞かれると、北野監督は「名付け親の(競走馬)キタノコマンドールに、単勝で入れてみようか。本当は5万も買えないと思うけど」と笑ってみせた。【小林千穂】