「カメラを止めるな!」で石原裕次郎賞に輝いた上田慎一郎監督(34)は、製作費と同じ300万円の賞金の使い道について聞かれ「ビックリしました、それは。プロデューサーと相談し、キャストに臨時ボーナスで山分け」と明かした。その上で「余った費用は今夜『カメラを止めるな!』の忘年会に使います」と宣言した。
「カメラを止めるな!」は、山奥の廃虚で、ゾンビ映画を撮影する自主映画の撮影隊を描いた。37分ワンカットのシーンを撮る中、本物を求める日暮隆之監督(浜津隆之)の狂気に近い激しい演出の中、壮絶な撮影に進んでいく撮影隊を描く物語だ。17年1月に新人監督と俳優の養成企画として立ち上げ、オーディションで選んだ12人の俳優のワークショップを経て同6~7月に8日間で撮影。わずか300万円で製作された。当初は同11月の6回のイベント上映の予定しかなかったが、大きく変わる展開と数多くの伏線が絡み、観客が“ネタバレ厳禁”の合言葉をSNSで拡散。6回は満席となり、話題を呼び、その後、国内外の各映画祭、賞で評価され、6月23日に都内2館での公開が決まった。
公開後は、上田監督と俳優陣が連日、舞台あいさつを続けた。作り手と観客が手を携えて口コミで映画を広げ、7月に全国に公開が拡大。公開から5活で興行収入は30億円を突破した。
上田監督は「6日間のイベント上映、お披露目で終わるはずの映画。ここまで、つながるとは夢にも思っていなかった。パッと目が覚めたら夢じゃないかと思うくらい…理想のマックス、これ以上、ないところまで来られた。劇場公開の予定も何もない頃、薄目で大きな未来を見ていたのがここまでつながったのかなと」と感慨深げに振り返った。
主演の濱津隆之をはじめ、キャスト11人が花束プレゼンターとして登壇した。代表してあいさつした濱津は「上田さん…監督、おめでとうございます。キャスト代表としても、このような賞をいただけてうれしいです。五反田の知らないビルの、こぢんまりとした1室で始まりました映画が、この場にいられるのは、見て自分たち以上に面白さを信じ、自分たちの知らない先に届けてくださった皆様のおかげ。感謝しかないです」とスピーチした。【村上幸将】