池松壮亮(29)は、14年の助演男優賞からステップアップしての主演男優賞に「このたびは名誉ある賞をいただき、本当に光栄。5年前に賞をいただきまして、戻って来られた。賞をいただくことで、作品にスポットを当ててもらった」と笑みを浮かべた。

「宮本から君へ」は、90年に漫画誌「モーニング」で連載された新井英樹氏の漫画を原作に、池松主演で18年にテレビ東京系で連続ドラマ化(全12話)。正義感が強く、人一倍不器用な文具メーカー「マルキタ」の営業マン宮本浩が、仕事や恋愛に愚直なまでに向き合う生き様を描いた。9月27日公開の映画は、会社の先輩・神保(松山ケンイチ)の仕事仲間の、中野靖子(蒼井優)と恋に落ちた宮本に訪れた、愛の試練を描いた。

池松は、先に登壇した監督賞受賞の真利子哲也監督のあいさつを受けて「真利子さんからもあったように、なかなか苦労した。僕の所には7年前に話が来た。何度も何度も頓挫し、次に進んだ方がいいと何度も思った」と実写化への困難な過程を振り返った。その上で「その日のことを思うと、ここに立っているのは出来過ぎの感じ。連戦、連敗、負け男として成立している主人公・宮本浩らしくないと思うところもあるけれど信じた分、大切な思いがある」と感慨深げに語った。

前年受賞者で、盾のプレゼンターを務めた松坂桃李は「共演させていただいた気持ちがよみがえる。アクションの最中、骨折したんですけど、誰にも言わずやり遂げた」と池松のエピソードを明かした。共演し、花束を贈呈した蒼井優は「日本映画界にとって、ものすごい方だと思っている。いろいろな役をやられている中でも、新しい引き出しが開いた作品」と池松をたたえた。

池松は「個人的なことですけど、来年30歳になる。若手とは言っていられない。もっと成長してやっていけたらと思います」と20代として最後の年の受賞に、気持ちを新たにした。