<日刊スポーツ映画大賞:特別賞・新藤兼人>◇28日◇ホテルニューオータニ

 第25回日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎賞(日刊スポーツ新聞社主催、石原裕次郎記念館協賛)の授賞式が行われた。

 5月29日に現役映画監督のまま、100歳で死去した新藤兼人さんに、特別賞が贈られた。昨年は「一枚のハガキ」で作品賞と監督賞を受賞。車いす姿で出席した授賞式では、次回作の意欲も口にしていたが、志半ばで天国へ旅立った。

 大手配給会社に頼らない独立プロで、反戦をテーマにした製作姿勢を貫いた。80歳を過ぎると、大好きだった将棋とマージャンをやめた。「残り少ない人生、少しでも映画に集中したい」という思いからだった。授賞式に出席した映画プロデューサーの新藤次郎氏(63)は「自分に正直で、常に新しいことを考えている人だった」としのんだ。

 兼人氏には幻の「遺作」がある。孫で映画監督の新藤風(かぜ)さん(36)は「2~3年前の誕生日、祖父に脚本をもらったんです。私がいつか撮れるときが来たら、作品を世に出したい」と明かした。肉体は果てようとも、新藤イズムは脈々と受け継がれていく。【森本隆】