<日刊スポーツ映画大賞:監督賞・内田けんじ(鍵泥棒のメソッド)>◇28日◇ホテルニューオータニ
第25回日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎賞(日刊スポーツ新聞社主催、石原裕次郎記念館協賛)の授賞式が行われた。「鍵泥棒のメソッド」で監督賞を受賞した内田けんじ監督(40)は登壇するや笑顔になった。今年5月に100歳で亡くなった新藤兼人監督の次男次郎氏から盾を授与され、降旗監督、周防監督、阪本監督とそうそうたる映画人に囲まれ、「尊敬してる方々と一緒でうれしかった」と語った。
祝福の花束を贈った主演堺雅人(39)は、役作りの過程で「『偏差値45になって演じてくれ』と(内田監督に)言われました」と明かした。二枚目の堺を三枚目にするための指示だった。しかし、内田監督は「僕のわがままを聞いてくれる役者さんを集めるのが仕事でした。偏差値40ぐらいでやってくれました。想像を超えましたね」と振り返った。
その上で、堺について「共演した香川(照之)さんもそうですが、役者という動物。役者しか興味がない。『目立とう』『売れたい』とかがない。悟りを開いて俳優道を行っている感じ」と評した。全く笑わない出版社員を演じた広末涼子には「魅力的な笑顔を封印してもらったのも広末さんだからできた。それでも魅力が損なわれない人。なかなかいない」と感謝した。
それら役者への注文を「わがまま」と謙遜する内田監督だが、堺は「頼りがいがあった」と言った。そんな頼れる“わがままな”監督は今後に向けて、「1800円払ってでも見に行こうと思ってもらえる日本映画を作っていきたい」と、揺るがざる信念も口にした。【三須一紀】
◆鍵泥棒のメソッド
売れない役者で無職状態の桜井武史(堺雅人)は、自殺にも失敗してしまうさえない男。銭湯で見かけた羽振りの良さそうな男(香川照之)が、足を滑らせ頭を打ち、救急車で運ばれる騒動に遭遇し、とっさに自分と男の荷物を交換する。翌日、病院を訪ねた桜井は、男が記憶をなくしていることを知る。男は自分が何者なのか探そうとする中、出版社で働く香苗(広末涼子)に出会う。
◆内田(うちだ)けんじ
1972年(昭47)7月30日、神奈川県生まれ。92年サンフランシスコ州立大芸術学科映画科入学。映画製作、脚本を学んで帰国後、自主製作した「WEEKEND
BLUES」がぴあフィルムフェスティバルで企画賞など受賞。05年の劇場デビュー作「運命じゃない人」はカンヌ映画祭で上映。3人兄弟の末っ子。08年「アフタースクール」撮影後に結婚。血液型B。