<日刊スポーツ映画大賞:作品賞・周防正行(終の信託)>◇28日◇ホテルニューオータニ

 第25回日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎賞(日刊スポーツ新聞社主催、石原裕次郎記念館協賛)の授賞式が行われた。「終の信託」で作品賞を受賞した周防正行監督(56)は「とてもうれしい」と喜ぶと同時に、「覚悟して作った作品。次のチャレンジの自信になりました」と語った。

 監督業を始めたころ、深刻でまじめな、社会と向き合う作品が高評価されていた。逆らうように、明るくて楽しく映画を作りたいと「シコふんじゃった。」「Shall

 we

 ダンス?」などを手掛けた。今回の受賞作は明るさはなく、人によっては暗くてつらい作品かもしれない。「昔も実は深刻でまじめに、きちんと社会や人と向き合う日本映画は素晴らしいと思っていました」と言い、「かつて衝撃を受けた作品や気骨ある監督たちに近づこうとして、1歩踏み出せた作品」と胸を張った。

 挑戦の理由は明快だ。「今は人と人が向き合うことが少ない時代。例えば若者のメールなど互いに目を見て話すことが本当に少なくなっている。向き合って生まれる空気を乗り越えていかないと本当の信頼は生まれないと思うから」。

 表彰式では「終の信託」のヒロインを演じた妻の草刈民代(47)からお祝いの花束を贈られた。妻に対して「集中力と緊張感、全身全霊でこの作品に参加してくれた。妻ですが、この場を借りてお礼を申し上げたい」と感謝の気持ちを述べた。表彰の盾は、前年受賞者の故新藤兼人さんに代わって出席した近代映画協会の新藤次郎社長から受け取った。【中野由喜】

 ◆終の信託

 折井綾乃(草刈民代)は評判の良い呼吸器内科の医師。不倫関係の同僚医師、高井(浅野忠信)に捨てられ、失意の中にいた。傷を癒やしてくれたのは、重度のぜんそくを患う江木秦三(役所広司)だった。信頼関係を築くうち江木から、最期は早く楽にしてほしいと頼まれる。心肺停止状態になった時、綾乃はどんな決断を下したのか。決断は刑事事件に発展する。

 ◆周防正行(すお・まさゆき)1956年(昭31)10月29日、東京都生まれ。立大文学部卒。大学在学中に高橋伴明監督の助監督としてキャリアをスタート。84年「変態家族

 兄貴の嫁さん」で監督デビュー。監督作に「ファンシイダンス」「シコふんじゃった。」「Shall

 we

 ダンス?」「それでもボクはやってない」など。96年「Shall

 we-」で出会ったバレリーナ草刈民代と結婚。