<日刊スポーツ映画大賞:監督賞・是枝裕和(そして父になる)>◇28日◇ホテルニューオータニ
「そして父になる」で監督賞を受賞した是枝裕和監督(51)は「監督というのは、作品と出会い、優れた役者と出会い育てられていく」と喜びを語った。前年に同賞を受賞した内田けんじ監督(41)から渡された表彰盾を両手で持ち、感慨深げに見つめた。出演者の樹木希林(70)から「お世話になってます」と花束を贈られ、笑顔を見せた。
これまでカンヌ映画祭審査員賞など海外の映画祭で数々の受賞歴を持つが、国内の興行面では成功を収めていなかった。「そして-」では、6年間育てた子供が生まれた病院で取り違えられていた2家族を描いた。「取り違えより、血なのか、時間なのか、切実な問題」と向き合い、興行収入31億円の大ヒットになった。
是枝監督は「この作品で希林さん、真木(よう子)さん、リリー(フランキー)さん、何より福山(雅治)さんと出会ったことで、今までの殻を破り次のステージへと進めた。これからも新しい出会いを求めて頑張ります」。
福山が演じた主人公「良多」は、08年の「歩いても
歩いても」でも阿部寛が演じた主人公の名前に使った。高校のバレーボール部で4年下の後輩、矢野良多さんから取った。「良が多い、いい名前でしょう。自分に近い主人公を設定する時に使うんです。今回はちゃんと『福山雅治だよ』って断りました」と笑った。
自身も5歳の娘を持つ。「父になれているのかな。一緒にいる時間が少ないので非常に甘い父親。反省しています」と照れた。【小谷野俊哉】
◆是枝裕和(これえだ・ひろかず)1962年(昭37)6月6日、東京都生まれ。早大第一文学部卒業後、制作会社テレビマンユニオンに参加しドキュメンタリー番組を制作。95年の監督デビュー作「幻の光」で、ベネチア国際映画祭金オゼッラ賞を受賞。99年の「ワンダフルライフ」は、仏ナント3大陸映画祭グランプリ。04年「誰も知らない」と08年「歩いても
歩いても」でブルーリボン賞監督賞など受賞多数。
◆「そして父になる」
人生の勝ち組と思って生きてきた野々宮良多(福山)は、息子慶多(二宮慶多)が小学校に合格後、妻みどり(尾野真千子)が出産した病院から、子どもを取り違えた可能性があると指摘される。検査の結果、慶多は息子でないと判明。斎木雄大(リリー・フランキー)ゆかり(真木よう子)夫妻と、本当の息子琉晴(黄升■)を交えて話し合う中、良多は血か、愛した時間かで思い悩む。※■は火ヘンに玄