<日刊スポーツ映画大賞:主演女優賞・真木よう子(さよなら渓谷)>◇28日◇ホテルニューオータニ
吉永小百合(68)が、真木よう子(31)の匂い立つような色気を絶賛した。映画「さよなら渓谷」の入魂の演技で主演女優賞に輝いた。壇上のセレモニーでは前年受賞者の大先輩から「セクシーでうらやましい」とたたえられると、恥ずかしそうな笑顔を見せた。
吉永が表彰盾を差し出すと、真木は照れくさそうに両手で受け止めた。その差37歳。親子というにも年が離れている2人だが、吉永の方に若々しい笑みが、真木にはむしろ貫禄のそれが浮かぶ。「はた目にはそう見えたとしても、私は大先輩からいただくことで申し訳ない気持ちでいっぱいでした。いつも『お前は何考えてるか分からない』って言われるんです。誤解しないでくださいね」と表彰式後に振り返った。
実はこの日が初対面だった。登壇前、真木は「まさに『日本の女優』という感じの方ですよね。いくつになっても変わらない美しさと万人に愛されるオーラを持った方だと思います」。
表彰セレモニーで司会の露木茂アナウンサーが吉永に真木の受賞対象作「さよなら渓谷」の感想を聞く。「実は見てないんです」。吉永の答えに露木アナのマイクがわずかに下がる。一瞬の緊張感が走る。吉永が続けた。「でも『そして父になる』は素晴らしかったし、ドラマも拝見していますから」。露木アナと真木が笑顔になるのを待ったように吉永は「とってもセクシーでチャーミングで、うらやましい限りです」と絶賛した。清純派としてデビュー、清そなイメージが揺るがない吉永だからこそ、対極的な演技で主演女優賞を獲得した真木の魅力が実感できるのだろう。
レイプ、DV(ドメスティックバイオレンス)の被害者を描いた「さよなら渓谷」は文字通り、心身を賭した演技だった。壇上で大森立嗣監督(43)から花束を受け取り「最高の(撮影)チームでした。撮影した昨年夏、一生女優やめたくない、と思いました」と充実ぶりを振り返った。大森監督から「たわいのない世間話をしていたと思ったら、その直後の本番ですごいシーンにスッと入っていく。集中力は半端じゃありませんよ」と持ち上げられ、「本当ですか?
集中力は今後の課題だと思っていたんですけど」とまんざらでもない様子だった。
助演の立場で関わり、母親を演じた「そして父になる」は「現場で子育てしていたようなものですね」。同作の是枝裕和監督(51)も「子役のことはすっかりお任せしていた感じ」。
吉永も絶賛のセクシーさに加え、1人娘が4歳になるママとして自然と演技の幅も広がっているようだ。【相原斎】
◆真木よう子(まき・ようこ)1982年(昭57)10月15日、千葉県生まれ。中学卒業後、仲代達矢主宰の「無名塾」入塾。01年に映画「DRUG」でデビューし、06年「ベロニカは死ぬことにした」で初主演。06年「ゆれる」で山路ふみ子映画賞新人賞。10年のNHK大河ドラマ「龍馬伝」、今年1月期のフジテレビ系「最高の離婚」などドラマにも多数出演。運動歴は空手、陸上。160センチ。血液型A。
◆「さよなら渓谷」
緑深い渓谷の団地に住む尾崎かなこ(真木)と俊介(大西信満)が愛し合う最中に、幼児殺害事件が発生。容疑者として幼児の母親が逮捕されたが、翌日に「俊介と不倫関係だった」と証言し、俊介は取り調べられることに。それを受け、週刊誌記者の渡辺(大森南朋)は取材を続ける中で、俊介が大学の野球部在籍時代にレイプ事件を起こしていたことを知り、その被害者がかなこだったと知る。