<日刊スポーツ映画大賞:主演女優賞・宮沢りえ(紙の月)>◇28日◇ホテルニューオータニ
7年ぶり主演映画「紙の月」で初の主演女優賞を受賞した宮沢りえ(41)は公の場で初めて、9月に亡くなった母光子さん(享年65)への思いを話した。励まし、叱って、愛してくれた母がいたから自分がいるとして、「誠実にもがき苦しんで、飛躍する役者でいたい」とさらなる精進を天国の母に誓った。
前年受賞の真木よう子(32)から盾を贈られた宮沢は「この作品に出会えたことは人生の大切な、いとおしい1ページになった」とあいさつするうちに、自然と光子さんに対する思いが込み上げてきた。
「自分のことを話すのはよくないことだと思いますが」と前置きして、9月に肝腫瘍で亡くなった母への感謝を口にした。「私のプロデューサーだった母が今年亡くなりました。11歳で表現することを志し始めた時から私を支え、励まし、叱って、愛してくれた母がいたから、今の自分がここにいるとお伝えしたい」。そして「これからも誠実にもがき苦しんで、役とともに飛躍する役者でいたい」と誓いを新たにした。
死去後、公の場では母のことを話さなかった。しかし、受賞という晴れの場にいられるのは二人三脚で歩んだ母のおかげとの思いが感謝の言葉になった。光子さんが亡くなった時、舞台「火のようにさみしい姉がいて」の公演中だった。「亡くなった日に舞台に立った時は、ある覚悟、演じる覚悟が必要だった。舞台に立った瞬間のことは一生忘れられない」と振り返った。「今年は得るものが多かった。喜びから得るだけでなく苦しみ、悲しみからも得ることもあった」。
「紙の月」で共演した石橋蓮司(73)が花束を持って駆けつけ「夢と希望、絶望さえも与える女優でいてほしい」とエールを送った。宮沢は「心に響く言葉ですよね。絶望を生きる力に変える、そんな表現ができる女優になりたい。これからの私のテーマにしたい」。挑戦を恐れない女優魂にまた火が付いた。【林尚之】