<12球団担当記者が見た 今季のターニングポイント セ・パ6位>
24年のペナントレースは、セ・リーグ3位のDeNAの下克上日本一で幕を閉じた。12球団それぞれに、今季の成績を左右した「瞬間」がある。「12球団担当記者が見た 今季のターニングポイント」と題し、密着取材を続けてきたからこそ知る分岐点を記す。第1回は、両リーグ6位の中日と西武。
■頂点から転がり落ちた中日
勝負をかけるのが早かったのか。ある1試合を振り出しに竜は頂点から転がり落ちた。
4月18日ヤクルト戦(バンテリンドーム)。柳を約1年ぶりの中5日起用でマウンドに上げた。初めて開幕投手を務めた右腕は開幕から3試合で1勝0敗、防御率0・47。先発の軸は最高の滑り出しを切っていた。しかし、結果は4回途中、9安打5四球6失点。6連勝を含め、12試合続いた2失点以下のチーム記録は途切れた。
- 4月18日、中日対ヤクルト 4回表マウンドを降りる柳(中央)
柳は登板前に意気込んだ。「全然問題ない。中6日は1日持て余してる感じ。いいサイクルで投げられる。1日でも短くなるのはいいこと」。春季キャンプ直前ミーティングで、ナインへ「優勝」を鼓舞した。選手会長としてけん引する責任感にも見えた。
柳と小笠原との3本柱を期待した高橋宏が出遅れた。投手最年長の涌井もシーズンフル回転は望めない。22年の右肘手術から復帰の梅津は中7日以上の登板間隔が必要。大野も昨年の左肘手術からの復帰初年度でローテ起用を控えた。直前にメヒアが中5日登板で連勝をマーク。開幕ダッシュの持続へ最高のピースとしてベンチが柳に立てた白羽の矢が裏目に出た。
4月18日から4連敗。首位から陥落した。チームが再び首位に返り咲く日は来なかった。柳も6月中旬まで、4勝を挙げたが不振からファーム落ち。3年連続の規定投球回到達が止まった。7月26日に自力Vが消滅。9月18日阪神戦(バンテリンドーム)で敗れると、就任3年目の立浪監督は退任を表明した。チームは記録を更新する3年連続最下位で今季を終えた。【中日担当=伊東大介】
■リーグ歴代最低チーム打率の西武
3年ぶり最下位の西武は、貧打に苦しんだ。好機であと1本が出ずに敗れるケースが目立ち、1点差ゲームは20勝34敗。特に開幕16連敗を喫したロッテ戦(最終成績は4勝21敗)は、今季の勝負弱さを象徴した。9月29日の本拠地ロッテ戦で21敗目を喫した後、普段は温厚な渡辺久信GM兼監督代行(59)のいら立ちを隠せない様子が印象に残る。やり場のない怒りをぶつけるように指揮官は「塁は出るんだけど、ことごとくミスが出る。『よーし』というときに、何もできない選手を使っている自分が悪い」と拙攻を嘆いた。
チーム打率は2割1分2厘とパ・リーグ歴代最低。特に長打が少なく、本塁打数は60本と12球団の中で唯一2桁本塁打の選手がいなかった。主砲山川がFA移籍した影響も否めないが、今季最大の誤算は助っ人外国人の不発だった。
- 5月5日、西武対ソフトバンク 8回裏、アギラーは見逃し三振に倒れる
MLB通算114本塁打の右の大砲・アギラーは開幕4番を務めるも、5月に右足首痛で離脱。1軍復帰することなくシーズンを終え、出場30試合で本塁打は2本にとどまった。左の長距離打者として期待されたコルデロは日本球界への適応に苦しみ、23試合で本塁打1本。シーズン終盤の9月以降は外国人野手が1軍に名を連ねることはなく、来季に向けて若手の積極起用へとかじを切った。
松井前監督、渡辺GMが退団し、来季は西口監督による新体制で迎える。「全員がレギュラー白紙」と語る新指揮官の下、助っ人頼みではない打線の底上げが獅子再建の第1歩となる。【西武担当=平山連】