ヤクルト投手陣開幕から穴 オリックス嘆く貧打10連敗/今季のターニングポイント セ・パ5位
<12球団担当記者が見た 今季のターニングポイント セ・パ5位>
24年シーズンは、セ・リーグ3位のDeNAの下克上日本一で幕を閉じた。12球団それぞれに、今季の成績を左右した「瞬間」がある。「12球団担当記者が見た 今季のターニングポイント」と題し、密着取材を続けてきたからこそ知る分岐点を記す。第2回は、両リーグ5位のヤクルトとオリックス。
■小川 田口 清水 ヤクルト投手陣開幕から穴
開幕1週間。ここでヤクルトの運命は、決まったのかもしれない。
開幕ローテにエース小川の名前はなかった。3月上旬に右肘の違和感を訴えた。4年連続8度目となる開幕投手の最有力候補だった。小川自身、シーズンのスタートを切る役目に「トップというか、先頭で走れるように、毎年やりたいなと思います」と意気に感じていたが、今季最初の登板は4月26日阪神戦(甲子園)までずれ込んだ。結果的に24年はキャリアワーストの2勝で終了。昨季の10勝から大幅に勝ち星を減らした。
守護神候補だった田口は、開幕2戦目でいきなりの抹消。開幕戦の3月29日中日戦(神宮)の4点リードの9回に登板。1回2安打1四球で1点を失った。勝利こそしたものの、本来のキレと安定感はなく、翌30日に2軍行きとなった。5月に1軍復帰を果たしたが、9回の座を奪えず、41試合登板で防御率2・94と低迷。昨季は開幕からクローザーとしてリーグ2位の33セーブを記録。50試合、防御率1・86を記録しただけに、後ろを固定出来なかったのは誤算だった。
4月2、4日の敵地・広島戦は、「8回の男」清水が2試合続けて負け投手となった。20年から2年連続で最優秀中継ぎ投手のタイトルに輝いた右腕も、4月後半に抹消され、2軍では先発も経験。昨季まで4年連続50試合以上登板も、今季は17試合にとどまった。
エース、抑え、セットアッパーという、投手陣を支える軸の不調。開幕から早々に、埋められない穴は大きくあいていた。【ヤクルト担当=栗田尚樹】
■中嶋監督嘆く貧打 オリックス12年ぶり10連敗
敗戦直後、当時のオリックス中嶋監督から“らしくない発言”が聞かれた。ベルーナドーム一塁側のある小部屋。7月17日の敵地西武戦に完敗した直後、84試合で14度目完封負けの打線を問われた時だった。
「どれだけ必死にやってるか。今日に関して言ったら、大里、太田、元くらいかな。必死に見えたのは。あんまり名前出したらアカンかな」。最後に自制を添えたように、こういう形で個人名が出るのは珍しい。今シーズンで初めてに近かった。「全員を戦力」と掲げ、束になって立ち向かう戦術において、個々の意識低下は致命的。言葉から相当ないら立ちを感じた。
プロ未勝利の青山から三塁を踏めず、完封を献上。エース宮城を立てた試合で最下位西武に0-6と完敗した。借金2で自力Vが再消滅。覇気のない打線への静かな怒りは続いた。
「淡々とやってるように見えないようにして欲しい。必死にやってるように。それが今日は西武には見えた。見習わなきゃいけない。今時点で(パ・リーグで)一番弱いんじゃないですかね」。これまた異例の自虐で囲み取材を締めた。
この日から球団12年ぶりの10連敗。その間、3得点以上は3試合しかなかった。貧打の野手陣に対する、中嶋監督の嘆きのようなゲキが続いた。だが、笛吹けど踊らず。リーグ4連覇がはっきりと遠のいた。
試合が深まるにつれ、嘆きは、あきれ顔に変わった。そしてチーム内に巣くう「慣れ」を大きな理由に、衝撃の退任へとつながった。来季のV奪回は、まず個々の意識改革が最低限のノルマとなる。【オリックス担当=大池和幸】