<12球団担当記者が見た 今季のターニングポイント セ・パ2位>
24年シーズンは、セ・リーグ3位のDeNAの下克上日本一で幕を閉じた。12球団それぞれに、今季の成績を左右した「瞬間」がある。「12球団担当記者が見た 今季のターニングポイント」と題し、密着取材を続けてきたからこそ知る分岐点を記す。第5回は、両リーグ2位の阪神と日本ハム。
- 9月23日、阪神対巨人 7回表途中で降板する阪神先発の高橋(左)
わずか1日、わずか1点で、阪神の逆転優勝への機運が一気にしぼんだ。9月23日、本拠地甲子園で首位巨人を迎えた天王山。6回まで散発2安打と巨人打線を圧倒した高橋が、7回にまさかの3連打を浴び、決勝点を献上した。8月に1025日ぶりの復活星を挙げてから、試合前時点で4戦4勝。「救世主」でもチームを救えなかった。
2ゲーム差で迎えた巨人との2連戦。22日の初戦はチーム勝ち頭の才木を立てて、1-0の完封勝利。首位との1ゲーム差以内は8月2日以来で、連勝となれば一気にゲーム差なしとなっていた。試合後、岡田監督は「1戦1戦、なんとか勝ちを拾っていくだけ」と気丈に振る舞ったが、たった1点の差で再びゲーム差は大きな2に広がった。
今季の苦しさを象徴するような敗戦だった。0-1負けはこの日が7度目。序盤は4月7日ヤクルト戦(神宮)から10戦連続で3点以上を奪えないなど、好投の先発陣を援護できない試合も続いた。シーズン中に「打線が…」と問われた岡田監督は「何回も言ってるやん」と繰り返した。球団初のセ・リーグ連覇を目指した今季の誤算だった。
終戦を迎えた10月13日、CSファーストステージDeNAとの第2戦。試合後に岡田監督はぼやきながら言った。「連覇もそうやし、去年の数字を上げていくようにって。野手に関しては、去年がマックスというのはないと思ったからな」。1人1人がキャリアハイを目指せば、自然と頂点に立てる。前指揮官の期待に、来季は成績と結果で応えたい。【阪神担当=磯綾乃】
- 7月9日、西武対日本ハム 試合後、日本ハム新庄監督(左)は清宮をねぎらう
就任3年目で初のCS進出を果たした日本ハム新庄監督が「あそこがターニングポイント」と指摘したのは、7月9日西武戦(ベルーナドーム)。1点を勝ち越した延長10回に清宮が1号2ランでダメ押し。連敗を4で止めた試合だ。
この時期、チームはどん底状態だった。開幕から安定した戦いぶりを見せていたが、交流戦終盤から急降下していた。5月に最大9あった貯金を使い果たして、今季ワーストの借金3で5位まで転落。新庄監督も過去2年と同じように「このままズルズルと行くのか…」と覚悟していただけに、価値ある1発となった。
苦境を救った清宮の打撃を本格覚醒へとつなげていった新庄監督の“手綱さばき”もさすがだった。
試合後には「足を向けて寝られない」と感謝しながらも「彼は、すぐ変わるから」とニヤリ。新庄監督が清宮へ愛あるイジりをするのは、この日から恒例化していった。
このやりとりは、清宮にとってもいい緊張感を保つスパイスとなった。「たぶん褒められたら、なんかダメになっちゃうところがあると思うんで(笑い)。あれぐらいの方が全然いい」と歓迎。後半戦は打率3割2分7厘、12本塁打、39打点と結果で愛あるイジりに応え、チームを貯金15の2位フィニッシュに導いた。
これぞ「職業、モチベーターなんで」と話す新庄監督の真骨頂。来季も言葉巧みに選手の能力を引き出せれば、きっと日本一も見えてくる。【日本ハム担当=木下大輔】