明豊に代々受け継がれる“2人”で1セットの守り神
センバツで準優勝した明豊(大分)には、長年チームを見守り続ける“守り神”がいる。七福神の「大黒さん」の木彫り、ぬいぐるみの「ズームくん」だ。これらは切っても切り離せない。“2人”で1セットの守り神で、野球部に代々受け継がれてきた。
ズームくんは6、7年前に明豊野球部へやってきた。大黒さんに至ってはもっと昔にさかのぼるが、「大黒さん責任者」の江藤隼希投手(2年)は「OBの人でも詳しいことは分からないんです」というので、ちょっぴり謎めいている。
公式戦のたび、明豊の選手たちと応援団にまざって念を届けている。豊田吉(はじめ)副部長(27)は「伝統として受け継がれているので、守り続けています。見えない力、運を大事にしているチームなので、何か縁起がいいと思いながらやっています」と言い、責任者の江藤は「自分がグラウンドに持って行った日は負けてないんです」と明かす。チームは昨秋の九州大会準決勝で大崎(長崎)に2-3で惜敗。この試合については「自分の諸事情で他の人に運んでもらった日でした…」と江藤。どうやら勝ち運の効果は本当にあるようだ。
取り扱いにも心得がある。1つ目は、ズームくんはあえて洗わない。江藤は言う。「新たに洗うのと、きれいにするのは違います。甲子園でも九州大会で勝ち上がったままの良い感じでいられるように」と昨秋からの状態をキープ。運を外に放出させず、ため込むことを心掛けている。センバツ切符をつかむまでの激闘をスタンドから見守ってきた跡は、年季の入った生地に残る日焼けぶりにうかがえる。
2つ目は、大黒さんの設置法。取っ手の付いた箱から取り出した後、大黒さんの視界に打者が入るようにしてスタンドに置く。試合展開を見守ってもらうため、江藤が応援部隊の隙間を縫い、ベストポジションを探し当てるのだ。
江藤は「大黒さんを出した瞬間、今日はいけそうだなと思える勘があるんです」という。そして迎えたセンバツ決勝。試合前に予想を聞いた。「今日は難しい試合になるけど、ロースコア。大差にはならないと思います。打者の方々も振ってくれると思います」。
結果は2-3のサヨナラ負けだった。打線は優勝した東海大相模を上回る10安打。初回から先制し、8イニングで走者を出す攻めっぷりだった。初の日本一には届かなかったが、これで終わりじゃない。夏がある。最大の幸運の使いどころを“2人”とも心得ているのかもしれない。【望月千草】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「野球手帳」)
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