12年連続でNPBへのドラフト指名選手を輩出した四国IL徳島に見た“選手側”のドラフト戦略
異様の光景だった。10月24日、午後5時前。ドラフト候補がずらっと並んだ。一列ではおさまりきれず、2列にわたってスーツ姿の選手がドラフト中継が映し出されるスクリーンを見つめた。その数、13人。四国IL徳島ではNPB入りを望んで入団してきた選手たちが、“そのとき”へ向けて、固唾(かたず)をのんでいた。
歓喜の瞬間は何度も訪れた。徳島インディゴソックスからはDeNA3位で加藤響内野手(23)、楽天3位で中込陽翔投手(22)、阪神育成1位で工藤泰成投手(22)、ソフトバンク育成6位で川口冬弥投手(25)の合計4人が指名を受けた。名前が呼ばれるたびに会場がドッと沸いた。
今年のドラフトでは富士大が6人の指名を受けて話題になったが、徳島でも昨年は阪神2位指名の椎葉剛投手(22)ら6人が指名を受けた。今年も多数指名を受け、四国IL徳島から12年連続でのドラフト指名となった。
なぜ、独立リーグの四国IL徳島にNPB入りを目指して多くの若者が入団してくるのか。DeNA3位指名を受けた加藤がこう明かした。
「スカウトの方々がたくさん試合に来られるのはなかなかないのかなと。シーズン1年間を通してほとんどの試合に来ていたんじゃないかと思うくらいスカウトの方々が来てくださって、そういうところでアピールできたのが今回の結果につながったのかなと思います。チームの環境としては全員がプロを目指している球団なので、切磋琢磨(せっさたくま)できた」
スカウトの目に触れる機会が増え、アピールする場も豊富になる。チームにはドラフト候補になる選手も多いため、絶えずスカウトが見に来る環境が作り上げられているのだという。社会人のように高卒3年、大卒2年のように解禁があるわけでもなく、入団1年目のドラフト会議で指名を受けられることも魅力的のようだ。
大洋や日本ハムでプレーした岡本哲司監督(63)の言葉にもNPBへの選手輩出へ思いが表れていた。記者会見で、ドラフト指名を受けた選手に期待を寄せた一方で、選ばれなかった選手にも話題を向けた。「一生懸命取り組んできた中で指名漏れした選手もいます。これは監督の力のなさを痛感させられる1日でもあった」。指名漏れ選手のほうが多い現実も目の前にはあった。
社会人を“クビ”になり入団した椎葉や大学野球部を退部して徳島に入団してNPB入りをつかんだ加藤など、幅広い受け皿として存在感も高まっている。大学でも社会人でもない。近年、NPB選手も増えている独立リーグ。今後もますます注目が集まりそうだ。【林亮佑】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「野球手帳」)
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