札幌第一・野島2失点完投は「先輩のおかげ」と感謝
<高校野球春季北海道大会:札幌第一4-2北海道大谷室蘭>◇2日◇準決勝◇札幌円山
札幌第一が背番号1の力投で28年ぶり春制覇に王手をかけた。先発右腕・野島丈(2年)が9回3安打2失点完投。前回登板した白樺学園との初戦は1回2/33失点で降板しており、雪辱のマウンドでチームを勝利に導いた。札幌日大は7回2死二、三塁から8番・山本篤弥二塁手(3年)が勝ち越し右前適時打を放ち、28年ぶりに準決勝を突破。前回決勝で敗れた札幌第一にリベンジを狙う。
笑顔はない。決勝を見据え、淡々と試合を締めくくった。最後の打者を変化球で三振締めした札幌第一の野島は、表情を変えず、口を真一文字に締め、小さく右拳を握りしめた。「先輩たちが守ってくれたおかげで安心して投げられた」。無失策での勝利に、まず感謝の言葉が先に出た。
今春の札幌地区予選で初めて背番号18をもらった。初陣だった地区初戦の札幌藻岩戦で、7回無失点と好投。地区は2試合10回2失点と結果を残し、全道大会から背番号1に大抜てきされた。道大会デビューとなった5月29日白樺学園戦は「自分で抑えようと力んでしまった」と2回に四死球で崩れ、さらに3安打を浴び3失点。地区予選から一転、プレッシャーに押しつぶされた。
雪辱のマウンドは2回、先頭打者に四球を与え、犠打で1死二塁とされたところで主将の柴田颯(3年)が三塁から駆け寄った。「打たせていいんだぞ。俺たちがしっかり守るから」。野島は「あの言葉で初心に立ち返れた。自分で抑えるのではなく、地区予選みたいに思い切って投げて打たせてとろうと切り替えられた」と言う。課題の2回。気に掛けていた先輩の、さりげない心遣いが、2年生右腕の力を引き出した。
高校入学後の公式戦9回完投は初めて。調子の良さを見込んで抜てきした菊池雄人監督(45)も、野島の復調を「立ち上がりから気持ちが入っていたね」と喜んだ。優勝すれば同監督がエースだった90年以来28年ぶり。野島は「僕たちも、春にしっかり勝って夏につなげたい」と前を向いた。最後の甲子園出場は17年春。野島ら2年生は経験がない。春王者の勲章でギアを上げ、復権へのアクセルを踏む。【永野高輔】