ロビーの扉が開いた瞬間、別世界が待っていた。巨人戦時の約100人が最多の人出だった秋田空港。銀メダルをかけた金足農ナインを見ようと約1400人が集った。午後5時前にバスを降り母校へ戻ると、吉田に大きな人垣ができた。「本当にびっくりしました。それぐらい応援されたんだなと。全員の結束力があった。自分が今後も野球をやっていく上で、思い出に残る忘れられない大会になった」と感謝した。
秋田が生んだヒーロー。どんな夢を描いているのか。「(現時点で)全く考えていない」と前置きした上で「いずれプロ野球選手になって活躍したい」と言った。好きなチームを問われ「巨人が好きです」。行きたいか聞かれ「行きたいです」と素直に答えた。
高校生がプロ野球に進む場合、プロ志望届を提出しなければいけない。その上でドラフト会議での指名を受けるが、指名が重複すれば抽選もある。意中のチームが指名しない場合もある。そんな前置きは重々承知している。甲子園で思う存分暴れた本格派投手らしく堂々と、直球で未来像を明かした。
夢を形にしていく舞台が残っている。9月3日に始まるU18アジア野球選手権。「一番近い目標」でも勝負強さを発揮する。
投手では大阪桐蔭・柿木や浦和学院・渡辺らが選ばれている。二刀流の根尾昂内野手(3年)も加えれば、トップランクの9投手が並ぶ。吉田は「大阪桐蔭との試合で、自分の足りないところも分かった。藤原と根尾が強烈だった。強い仲間たちが味方になってくれる」と楽しみにしている。甲子園6戦で881球を投げ込んだ疲労と、9回に最速タイの150キロを出せる底力を加味。切り札として起用される可能性が高い。
日本高野連の竹中雅彦事務局長は21日の決勝戦後、永田裕治U18監督(54)と「疲労を取ってもらって、起用法を考える」と方針を確認。吉田を勝負どころで投入するプランが浮上する。最初のヤマ場はA組ライバル韓国戦(5日)。7日からのスーパーラウンドも決勝進出に向けた大一番。9日の決勝戦に万全の状態で先発させる手もある。吉田は「優勝に貢献したい。絶対に優勝する」。日の丸のユニホームでも躍動する。【高橋洋平】
◆プロ志望届 プロ入りを希望する高校生、大学生はプロ志望届の提出が義務付けられる。高校生の場合、提出者は日本高野連のホームページに掲載される。昨年は9月4日に掲載がスタート。10月12日に締め切られ、高校生は106人、大学生は105人が提出した。