ミラクル共栄学園が初の聖地切符「楽しもう!」絶体絶命から7得点、積み重ねた成果出た/東東京
<高校野球東東京大会:共栄学園12-6東亜学園>◇30日◇決勝◇神宮球場
「ミラクル共栄」が、初優勝で甲子園出場49代表の最後1枠に入った。
共栄学園が、伝統校の東亜学園に12-6で勝利。5-6で迎えた9回2死一、二塁、打野琉生外野手(3年)のセーフティーバントから打線がつながり一挙7点。エース茂呂潤乃介投手(3年)が5回2/3を2失点(自責1)と好救援し、3安打2打点と投打で活躍。逆転負けの東亜学園は、89年以来34年ぶりの甲子園に届かなかった。大阪は履正社が夏の大阪大会で12連敗中だった大阪桐蔭を3-0で破り、4年ぶり5度目の優勝を飾った。
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選手たちの笑顔がミラクルを起こした。最終回も、ベンチでは前向きな声が飛んだ。「楽しもう!」。試合終了まであと1死の9回2死一、二塁、打野は「直感です。サードの守備位置が少し下がっていた」と初球を三塁へセーフティーバント。相手の隙を突き、悪送球を誘って同点に追いついた。さらに2死一、三塁でダブルスチールを決め、三塁走者が生還し、7-6。その後も連打と四死球がからみ、絶体絶命から一気に7点。茂呂は「もう、奇跡だなと思います」と笑顔。準決勝も逆転サヨナラ勝ちで、2戦連続でミラクルを呼び込んだ。
原田健輔監督(37)は「私の采配や戦術が全部外れていて、その度に3年生や部員がカバーしてくれた。素晴らしい選手たちに巡り会えました」と感謝した。昨秋はブロック予選初戦で敗退し「これ以上落ちることはない」と方針転換。週に2~3日のグラウンドでの練習をやめ、食トレとウエートを強化した。生徒は自宅通学だが、学校の協力も得て学食で朝は白米500グラム、昼も500グラム、夜は700グラムのバランスのいい食事。ベンチ入りには体重が「身長(センチ)マイナス100」以上の数値を出すことなどを条件とした。当時を、横田優生主将(3年)は「監督は何を考えているんだろう。これで春は大丈夫だろうか」と不安を抱いたという。しかし確実に成果があり、選手は平均で10キロ以上体重が増えパワーアップ。飛距離が変わった。
専用グラウンドがないこともあり、連係プレーやサインプレーなどは、実はあまり練習を積めていない。それでもついてきてくれた選手たちを、指揮官は「積み重ねの成果」と目を細める。目標は勝利ではなく「見ている人に勇気や感動を与えること」。それは、聖地でも変わらない。【保坂恭子】
◆共栄学園が5-6で迎えた9回表の攻撃
先頭の横田主将が左前打を放つ。
無死一塁、菊池は右飛。
1死一塁、前田は一邪飛。
2死一塁、代打の清藤が死球。代走に斉藤。
2死一、二塁、打野が自らの判断で初球を三塁へセーフティーバント。三塁手の悪送球で二塁走者が生還し6-6。
2死一、三塁、高橋の2球目にサインでダブルスチール。三塁走者が生還し7-6。2死二塁となり、高橋が中越え適時三塁打を放ち8-6。
2死三塁、茂呂が初球を右前打で1点追加し9-6。
2死一塁、笹本は死球。
2死一、二塁、牟田口は四球を選ぶ。
2死満塁で、この回2巡目の横田が走者一掃の左越え二塁打を放ち、12-6。
2死二塁、菊池の3球目が捕逸で2死三塁。菊池は四球。
2死一、三塁、前田が振り逃げでアウトになり、攻撃終了。
◆共栄学園 1933年(昭8)に和裁塾を設立。38年に本田裁縫女子学校として設立された私立校。03年から共学。生徒数は726人(女子309人)。野球部は05年創部。部員数は65人(マネジャー3人)。甲子園出場は春夏を通じて初。主な卒業生は元バレーボール女子日本代表の益子直美、ビーチバレー浦田聖子ら。葛飾区お花茶屋2の6の1。御宿重夫校長。