イチロー氏はそのことも踏まえ「大阪の状況を見ると、大阪桐蔭と履正社の2強なんだろうと。強烈に(強豪私学を)意識しているよね? 一方で、相手がどう思っているか考えてほしい。彼らはどう思っているか、考えたことある? 僕は愛工大名電で野球をやっていて、愛知4強と言われて。この立場からするとベスト16のチーム、眼中にないです。意識もしていない。そこに挑むんだよ? 強豪校は強豪校としか(練習試合などを)やっていない。自分たちがうまくなるレベルのチームと試合をしている。だから(強豪と)差が開いていく。その壁は相当厚い。でも、みんなの情熱を持っていたら、一発勝負なら」。続けて「初めましてでここまで厳しいことを言うのは初めてです。僕も本気で来たと言うことを知っておいて」と選手たちの本気度を問うた。
練習では、股関節を意識した動きや、外野守備時の構え方など、レジェンドと密に接する絶好の機に丁寧に指導。選手とキャッチボールし、いきなり選手が落球すると「大阪桐蔭に勝つんじゃないの? 」と笑い混じりに突っ込む場面もあった。打撃でも約30スイングの実演指導を行い、75メートルのフェンス奥の体育館天井へ数球運ぶ打撃職人ぶりも見せた。
加藤日向(ひゅうが)主将(2年)は「イチローさんはオーラがすごかった。父と同じ年なのに、めっちゃ遠くに飛ばすし、肩も強いし、感激しました。走る、投げる、打つのすべての動きで股関節を使うことの大切さを学んだ。打撃でも、ヘッドを立てず、下げて打つことを教わった。いままでの僕の中にはない考えだったので驚いた。強豪私学からは、僕らは“眼中にない”と思われているんだということも知ることができた。悔しかったが、刺激的な2日間だった。来年の夏、成長した姿を見せることが恩返しになると思うので、本気で甲子園をめざして頑張りたい」と、感謝していた。
◆イチロー氏の過去の高校野球指導 20年12月の智弁和歌山が最初で、同校は翌年夏の甲子園で頂点に立った。その後は国学院久我山(東京)や当時浅野翔吾(現巨人)が在籍した高松商(香川)など強豪校に足を運んだ。甲子園出場経験のない千葉明徳や、部員が当時17人の新宿(東京)、富士(静岡)も指導。昨年11月に旭川東(北海道)のフリー打撃で快音を響かせ校舎3階窓ガラス直撃弾や、校舎を超える推定130メートル弾を披露。12月にはオリックス時代や06年WBCのキャンプで訪れた宮古(沖縄)で指導した。