練習時間は平日1日時間、冬の間は半日。個人練習が大半を占め、シートノックは大会前のみ。打撃練習はバックネットに向かって10分で30球を打つ。持論をもとに、練習を構成し、個人が動かない時間が少ない練習を意識する。「野球の日本代表も、合わせる作業をしないのにうまいじゃないですか。サッカーやバスケのような細かい連係もない。野球ってほぼ個人能力が7、8割。連係は2、3割。高校野球の練習はその逆が多くてもったいない。勝敗に関わるのは個人の力ですね」。
2014年(平26)8月就任した当時は長時間の練習が当たり前だった。なかなか勝利にも恵まれず夏の大会での初勝利は就任4度目の夏の2018年(平30)7月だった。同年9月、兵庫県教育委員会が教職員の負担軽減と生徒の健康管理を勧める指針「いきいき運動部活動」を発表。部活動の休日は週2日を推奨する「ノー部活デー」や1日2時間以内の練習時間などを打ち出し、指揮官も方向転換。年の初めに年間予定を立て、大会前を除き、早い段階で練習日と休養日の設定した。
近年最大50人の部員がいたが、19年に2学年で16人に落ち込んだ。理由を探るべくミーティングを行うと、時間的拘束が長く勉強時間の確保ができない、丸刈りが嫌との声が上がった。「最初は勇気がいりましたよ」。監督の耳にも、野球部志望の生徒が丸刈りを嫌い、他の部活へ入部した情報が届いた。「僕にはその子から学ばされた。僕が、丸刈りでないといけないというこだわりで、野球をやりたい人や人材を取りこぼしていたのかな…と。一気に偏見がなくなった」。2年前に1人丸刈り部員がいたが、今はゼロだ。
毎年のように国立大進学者を出すなど県内屈指の進学校として知られる。部員は自発的に各学年でアプリで1日ごとの勉強時間を共有。OBは昨年の主将が神戸大に進学した。部活動で2時間の練習を終えると、大半の部員は20時から22時までは塾で受験勉強に励む。ナインの通学路近くにある甲子園。今回、県の推薦校に選ばれ、副将の江見優汰外野手(2年)は「高校野球をするなら『甲子園』というのはある。その可能性があってうれしいですし、自分が野球をやるために、チームでもっとこういうプレーがしたいとイメージできるいいきっかけになりました」。
甲子園期間は、他県の強豪校に練習場で貸し出すほか、過去には甲子園塾の会場にもなった。今回の推薦校選出に際し、東監督は「目標にしていたので、試合以外の姿勢も評価していただけてうれしい。普通の公立校に勇気を与えられるかな。うちのやり方でも、十分戦える」。13日に21世紀枠の全国各地区9校の候補が選出され、その後、1月24日に2校が選ばれる。【中島麗】
◆近畿の21世紀枠推薦校
京都・山城・4強
奈良・奈良・準優勝
和歌山・紀央館・8強
大阪・市岡・16強
兵庫・西宮東・8強
滋賀・水口・8強
※成績は秋季府県大会、すべて公立校