ホンダ井上V弾「自分いるから弱いんじゃないかと」

  • 決勝NTT東日本対ホンダ 5回裏ホンダ1死一、二塁、井上は右越えに本塁打を放ちガッツポーズする(撮影・柴田隆二)

<都市対抗野球:ホンダ4-1NTT東日本>◇第12日◇3日◇決勝◇東京ドーム

ホンダ(狭山市)が11年ぶり3回目の優勝を果たした。1-1の5回、井上彰吾外野手(29=日大)が決勝3ランを放ち、高校(筑陽学園)、大学の先輩でもある長野久義外野手(現広島)を擁した09年以来の頂点に導いた。大会MVPにあたる橋戸賞も受賞。ルーキー右腕の朝山広憲投手(23=法大)が8回3安打1失点で若獅子賞。NTT東日本(東京都)は、3年ぶりの優勝を逃した。

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優勝の瞬間、左翼を守っていた井上はあふれる涙をこらえられきれなかった。「8年間、勝てなくて。自分がいるから弱いんじゃないかと考えたこともあった…」。ベンチ前で選手たちに囲まれ再び号泣した。

8年分の悔しさを一打に込めた。5回1死一、二塁から初球の113キロのチェンジアップを捉えると、打球は右翼席へ。何度もガッツポーズを突き上げた。

大学の先輩、広島長野を目標に掲げた。09年の都市対抗野球で活躍する先輩の姿に憧れ、ホンダに入社。8年目にして同じ舞台で優勝に導いた。「長野さんと同じ経験ができてうれしい」と喜びをかみしめた。

今年、チームが掲げたスローガンは「原点回喜」。「帰」を「喜」に置き換え、勝利の喜びを誓った。コロナ禍の今季、アマチュア野球界は春、夏の甲子園、大学の全ての全国大会、社会人の日本選手権と中止が相次ぎ、唯一、都市対抗野球が開催された。井上は笑顔のチームメート、そして拍手を送る観客に目を向け「野球っていいなと思いました」と、1年分の思いをかみしめた。【保坂淑子】