宿敵巨人と一騎打ちの争奪戦が激化をたどる中、悩みに悩んだ。タイガースの主砲としてチームを背負い続けるべきか。東京で新たなチャレンジに足を踏み入れるべきか。五分五分の状態で考え抜いた末、最後は8年間苦楽を共にしたナインやファン、チームへの愛着に従った。
FA宣言を表明した11月13日から16日目。大騒動のど真ん中で苦しんだ。FA市場では前代未聞のTG決戦。報道は過熱し、臆測の域を出ない情報も頻繁に飛び交った。21日のタイガース杯ゴルフ、23日のファン感謝デーには参加したが、25日の球団納会は欠席した。これ以上、周囲に迷惑をかけたくないだけだった。
「本当に悩みました。常に自問自答する日々というか。どうしたらいいのか、自分にとって何がベストかをずっと考えた。大変でしたけど、逆に考えることもあったので、プラスの時間になったかなと思います」
阪神は最終的に5年の大型契約を用意し、一貫して全力で慰留を続けてくれた。一方の巨人は6年24億円超の大型契約で熱心にアプローチしてくれた。宿敵に至っては、阿部監督自ら「世紀の大FAの先駆者になってほしい」と声をあげ、坂本らナインからもラブコールを送られた。誠意を尽くしてくれた両球団には感謝しかない。
残留か、巨人移籍か。揺れ動いた時期は「それはありました」と素直に振り返った。そんな中、前日28日には兵庫県内で選手会主催のゴルフ、納会に参加。気の置けない仲間と時間を共にして、最後に心が動いたのは間違いない。
「チームメートともいろいろ話したけど、裏方さんからもいろんな言葉をかけてもらった。そういう方々に必要だと言ってもらえてうれしかった」
この日は午前中から両球団、藤川監督らへの報告を済ませ、17時から甲子園で会見した。今後は5年17億円プラス出来高で契約を結ぶ。
「自分でしっかり決断したことなので、覚悟をもってやりたい。優勝、日本一に向けて、もう1回しっかりやらないといけない。チームメートだけでなく、スタッフ、裏方の皆さんともしっかり頑張りたい。(ファンに対しても)今度はプレーで感謝の気持ちを返せるように頑張りたい」
阪神タイガースの背番号3に誇りを持ち、来季以降も甲子園で主役を張る。【佐井陽介】
<大山FAの経緯>
11月12日 国内FA権行使を決断。「他球団の評価を聞けるチャンス」と本紙に説明。
13日 甲子園でFA宣言を表明し「いろいろ考えて悩んで決めたい」。藤川監督は秋季キャンプ地の高知で藤川監督は「今はそっと見守ってあげるのが一番いい」と胸中を気遣った。
21日 神戸市内でタイガース杯ゴルフに参加「今は何もお話しできることはない」とした上で「自問自答しながら毎日いる」。
23日 ファン感謝デーに出席。虎党から大山コールを送られ、感謝について「それはもちろんです」。同日、巨人阿部監督が北海道でトークショー後、「世紀の大FAの先駆者になってほしい」とラブコール。
25日 球団納会を欠席
26日 巨人坂本が契約更改後の会見で坂本は「大山くんはいい子なので来て欲しい」とコメント。
28日 選手会主催のゴルフ、納会に参加。
◆大山悠輔(おおやま・ゆうすけ)1994年(平6)12月19日生まれ、茨城県出身。つくば秀英-白鴎大を経て16年ドラフト1位で阪神入団。1年目の17年から先発4番を務め、19、23年には全試合出場。23年は最高出塁率(4割3厘)で初タイトルを獲得し一塁部門でベストナイン、ゴールデングラブ賞。球団在籍137本塁打は13位。181センチ、94キロ。右投げ右打ち。今季推定年俸は2億8000万円。
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