12年沖縄「名公演」再現狙うも…17年雨中止

<ザ・真相~AKB選抜総選挙~連載(6)>

 昨年の第9回AKB48選抜総選挙は、2つのハプニングで記憶しているファンも多いだろう。1つは、開催地沖縄の悪天候による、屋外開票イベントの中止。そしてもう1つは、NMB48須藤凜々花の結婚宣言。今週は中止騒動の真実を、AKB48劇場の細井孝宏支配人に語ってもらった。

 開催2日前、沖縄入りした細井支配人はがくぜんとした。大雨がたたきつけ、会場の豊崎美らSUNビーチは地面がぬかるんでいた。「客席の方は田んぼのようでした。『うわ…』と言葉を失いました」。当初は雨天決行を発表していたが、会場の状態は想像を超えていた。決定打になったのが、当日の天気予報。「雷注意報の可能性が高いと分かりました。『お客様を危険にさらせない』とスタッフの意見が一致しました」。協議の末、16日朝に中止を決定した。

 無料コンサートは中止となり、開票自体は豊見城市中央公民館で代替開催することになった。史上初の無観客での開票となったため、会場に入れないファンの受け皿が必要だった。地元の協力を得て、夜中2時すぎまでパブリックビューイング(PV)の会場探しに奔走。メンバーの楽屋に使用する予定だったテントに大型ビジョンを持ち込み、約600人を収容した。

 AKB48は12年7月、同じ会場でチームKの全国ツアーを開催した。名曲「夕陽を見ているか?」が流れる中、西の空に夕日が沈む、屈指の名公演だったという。中止には見通しの甘さを指摘する声もあったが、細井支配人のもとに届いたのは、「チームKのコンサート、見ていたんです。またあの光景を見たかったなあ」「PVの会場を用意してくれてありがとう」と、激励の言葉が多かったという。

 細井支配人は言う。「常に挑戦していかないといけないのがAKB。もちろん失敗もありますが、その裏側にある成功で、ファンの方を喜ばせたい。それが大前提なんです」。AKB48の「トライ&エラー」の精神を貫いた結果が、中止の真実だった。

 今年の総選挙は初めて、開催都市を公募した。条件の1つに「会場に屋根があること」が加えられた。「僕も『屋根付きの場所で』と主張した1人です。今年も同じでは、学習能力がないですから」(細井支配人)。苦い教訓は今年、しっかり生かされた。【森本隆】

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