「グラディエーターII」歴史活劇のワクワク感再び ドラマ部分を回すのはデンゼル・ワシントン
「グラディエーター」(2000年)は画期的な作品だった。映画黄金期を彩った「スパルタカス」や「ベン・ハー」のローマ史劇世界を21世紀によみがえらせた。作品賞を含むアカデミー5冠。主演男優賞となったラッセル・クロウの人気は不動となった。
「グラディエーター2 英雄を呼ぶ声」(15日公開)は24年ぶりのその続編だ。
主人公は前作で英雄として死んだマキシマス(ラッセル・クロウ)の息子ルシアス(ポール・メスカル)。流浪の末にたどり着いた地で戦士となった彼は、ローマ軍の侵攻で愛妻を失い、捕虜となる。奴隷商人の手に落ち、運命に導かれるように父と同じ剣闘士(グラディエーター)となってコロセウムで命懸けの戦いに身を投じていく。
当時のローマは、悪名高い双子皇帝のゲタとカラカラの圧政で荒廃し、市民から英雄と仰がれる将軍アカキウスは、妻で先々代皇帝の娘ルッシラの後押しを得て双子皇帝の追放を画策している。
そのルッシラこそ、かつてのマキシマスの恋人であり、ルシアスの母親だった。父親譲りの強靱(きょうじん)な体と人望を併せ持ったルシアスは剣闘士の中で頭角を現し、帝国を揺るがず騒乱に巻き込まれていく。
第1作に続いてメガホンを取ったリドリー・スコット監督は前作のために行った膨大な調査資料をもとに史実に則した大枠の中で、ヒリヒリするような人間ドラマを展開している。
パリのそれを想像するからだろう、意外と小ぶりな凱旋(がいせん)門。対照的にコロシアムとそれを取り巻く街は壮観だ。すさまじい海戦、陸戦の再現やコロシアム内に大量の水を引き込んで行われた模擬海戦にも迫真力がある。前作の「ナポレオン」もそうだったが、視覚効果を駆使した「リドリー史劇」のスケール感には毎度息をのむ。
アイルランド出身のルシアス役メスカルの寂しげな表情、骨太な感じがいい。ルッシラは前作に続いて59歳になったコニー・ニールセン。監督こだわりのキャスティングなのだろう。24年の年輪がいっそうの気品となって作品の厚みになっている。
奴隷商人としてルシアスを剣闘士に導くマクリナス役にデンゼル・ワシントン。彼がストーリーに折り目を付けるキーマンとなるが、心の奥底に何かを秘め、決してそれを人に読ませない。ワシントンならではの懐深い演技に引き込まれる。
彼を軸にまわる濃い人間ドラマに加えて、最新の視覚効果を駆使したスペクタクルの連続。今では考えられないような巨大セットを組んだ黄金期の映画作家たちも、このビジュアルをうらやむに違いない。【相原斎】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「映画な生活」)
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映画のない生活なんて、考えられない。映画は人生を豊かにする--。洋画、邦画とわず、三十数年にわたって映画と制作現場を見つめてきた相原斎記者が、銀幕とそこに関わる人々の魅力を散りばめたコラムです。