赤血球の永野芽郁と白血球の佐藤健 「はたらく細胞」は体内スペクタクル
「ミクロの決死圏」(66年)は当時小学5年の私にとって衝撃的だった。潜航艇ごとミクロ化された医療チームが人間の体内を探索するという画期的なSF作品である。まるで星空のような風景に「体内宇宙」を実感させられた。
「はたらく細胞」(13日公開)は、清水茜さんの人気コミックを原作にそんな体内世界の細胞たちを擬人化して描いている。メガホンは「翔んで埼玉」の武内英樹監督で、原作の体内世界に外側の人間ドラマを加え、子どもにも見せたくなるような人体科学エンタメ作品に仕上げている。
人間ドラマの方は茂(阿部サダヲ)と日胡(芦田愛菜)が「マルモのおきて」以来の親子役で共演。娘思いだが不摂生な茂と、聡明(そうめい)で健康優良な女子高生の日胡の体内世界は、ブラック企業と優良企業のようなコントラストをなしている。
メインとなる体内世界の主人公は永野芽郁演じる赤血球と佐藤健の白血球。工場のようなビジュアルの中で、各部位の活動支えるために酸素を運ぶ赤血球の「実直さ」と、異物を迅速に取り除く白血球の「俊敏さ」をそれぞれ全力で演じている。ひた向きにそして感情豊かな赤血球と体育会系のにおいを放つ白血球のやりとりが魅力的で、工場や商店街に模した各部位のビジュアルもふむふむと楽しめる。
日胡の、たかが擦り傷が体内に及ぼす衝撃や、暴飲暴食がたたってトイレを目指す茂の肛門の攻防戦に笑わされる。この肛門攻防には、そういう仕組みだったのかと、けっこう納得感があった。ためになる豆知識の連打に良質なファミリー映画のにおいを感じる。
親子のどちらとは言わないが、極め付きの悪玉細胞の登場でその体内では生死を賭けた最終戦争が始まる。壁走り、特大ジャンプ…佐藤のアクションの迫力は「るろうに剣心」をほうふつとさせる。というより上回っている。
山本耕史、仲里依紗、松本若菜、染谷翔太、板垣李光人、加藤諒…そしてFukase。それぞれがさまざまな細胞の個性を喜々として演じ分け、撮影現場の楽しげな雰囲気が伝わってくる。
時にほろっとさせながら気持ちいい幕切れ。細胞たちの奮闘に、いつの間にか自分の健康管理を考えさせられた。【相原斎】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「映画な生活」)
赤血球の永野芽郁と白血球の佐藤健 「はたらく細胞」は体内スペクタクル
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映画のない生活なんて、考えられない。映画は人生を豊かにする--。洋画、邦画とわず、三十数年にわたって映画と制作現場を見つめてきた相原斎記者が、銀幕とそこに関わる人々の魅力を散りばめたコラムです。