保険適用になる歯列矯正とは/歯学博士照山裕子
「100歳まで食べられる歯と口の話」<42>
歯並びの乱れ等、見た目が気になり歯列矯正を検討される方は大変多いです。かみ合わせのバランスを整えたり、汚れが付きにくくセルフケアしやすい歯列に導くことで、歯自体の健康寿命を延ばすことができる点が矯正治療の最大のメリットです。とはいえ高額な治療費がかかるイメージがある点から、相談自体をちゅうちょされたり、保険適用での治療が受けられる症例にもかかわらず美容整形に足を運んでしまう患者さんもいるようです。悩まれたらまずどう判断すべきかという簡単なポイントをお伝えします。
上顎前突(じょうがくぜんとつ=出っ歯)、下顎前突(かがくぜんとつ=受け口)、顔面非対称を伴う反対咬合(はんたいこうごう=顔の歪みを伴う受け口)など、骨格的な問題を含んだ「顎(がく)変形症」であれば保険適用での治療が可能です。口の中を整えるだけでは根本的な改善が困難で、顎の骨を切除する必要があると判断される症例です。
逆にいえば、こうしたケースで歯並びだけをいじったとしても限界があります。見た目だけはなんとか改善したものの、歯にかかる負担が増えてしまって結果長持ちしないという可能性も考慮しなければなりません。
あごのずれや左右バランスを自分で確認する方法があります。
横顔を見て、鼻の先端と顎の先端(オトガイ)を結んだ線をE-ライン(エステティックライン)と呼びます。上唇と下唇がこの線の中におさまっていれば正常、そうでなければ1度相談に行ってみましょう。左右バランスは鏡を見てある程度わかるかと思いますが、割り箸や定規などをかんで目の平面と比較し、傾きが見られるようなら顔面非対称と判断してください。大学病院など「顎口腔(こうくう)機能診断施設」の認定を受けた医療機関で適切な治療が受けられます。手軽なマウスピース矯正では治りませんので十分注意してください。