氷上で、スピンやジャンプ、ステップなどを音楽にあわせて演技する競技。技術と芸術性で争う。フィギュアとは「図形」という意味。湖などに張った氷に、スケート靴のエッジで円などの形を描いて遊んでいたことからフィギュアスケートと呼ばれるようになったとされる。1990年3月の世界選手権まで、スケーティングで課題の図形を正確に描く「規定」(コンパルソリー)と呼ばれる演技もあった。
男女シングル、ペア、アイスダンス、団体
かつては欧米勢が圧倒的に強かったが、伊藤みどりがトリプルアクセル(3回転半)を武器に台頭。89年世界選手権を制し、92年アルベールビル五輪で銀メダルを獲得するなど、以後のアジア選手躍進の道をつくった。そして、06年トリノ五輪で荒川静香がアジア人初の金メダルに輝いた。
現在はジャンプの高難度化が加速。男子では複数の4回転ジャンプ挑戦が当たり前となり、2021年まででクワッドアクセル(4回転半)を除く5種類の4回転ジャンプが国際スケート連盟(ISU)に認定されている。羽生結弦は4回転ループに世界で初めて成功。4回転半にも挑戦している。女子では2002年に世界で初めて4回転サルコーに成功した安藤美姫以外、4回転ジャンプを組み込む選手はほぼ皆無だったが、2018年3月の世界ジュニア選手権でトルソワ(ロシア)が、安藤以来となるサルコーとトーループの2種類の4回転ジャンプに成功。その後も主にロシア選手が4回転ジャンプを成功させていて、2021年時点でループ、アクセルを除く4種類のジャンプが認定されている。
▽男女シングル
ショートプログラム(SP)とフリーの合計点で争う。SPの演技時間は2分40秒±10秒で、決められた7つの必須要素を入れてプログラムを構成。上位24人がフリーに進む。自由に構成できるフリーの演技時間は男女とも4分±10秒に統一。ジャンプは7回までで、そのうち3回は連続ジャンプ(3連続は1回)が許されている。いずれも技術点(テクニカル・エレメンツ)、演技構成点(プログラム・コンポーネンツ)、減点で算出され、技術点は基礎点+出来栄え点(GOE)、演技構成点はスケート技術、演技のつなぎ、表現力、構成(振り付け)、音楽の解釈の5項目(10点満点)で評価される。
▽ペア
SPとフリーの合計点で争う。演技時間はシングルと一緒。SPの上位16組がフリーに進む。男性が女性を持ち上げる「リフト」や、女性を空中にほうり投げてジャンプさせる「スロージャンプ」などが加わる。
▽アイスダンス
リズムダンス(RD)とフリーの合計点で争う。演技時間はRDが2分50秒±10秒、フリーが4分±10秒。RDの上位20組がフリーに進む。ペアと違ってジャンプはなく「氷上の社交ダンス」とも呼ばれる。
▽団体
男女、ペア、アイスダンスの4種目のうち3種目以上の出場枠を持つ国・地域の中から、ランキング合計上位10チームが出場。最低3種目に出場しなければならない。SP(RD)では1位に10点、2位に9点…10位に1点が与えられ、4種目の合計順位点の上位5チームがフリーに進む。フリーでも1位に10点、2位に9点…5位に6点が与えられ、SPとフリーの順位点の合計で成績が決まる。
~~もし同点だった場合~~
SPで5位が同点の場合は順位点の上位を比較する。フリー後に同点の場合は以下の通り。
①異なる種目の中で上位2つの順位点を合計して決定。
②順位点の合計が同じ場合は、その上位2種目の演技得点(スコア)の合計で決定。
③それでも並んだ場合は、異なる種目の中で上位3つの順位点を合計して決める。
④さらに同点の場合は、その上位3種目の演技得点の合計で比較する。
⑤それでも決着がつかなかった場合は、同順位とみなされる。
▽トーループ
【男子】カート・ブラウニング(カナダ)1988年3月世界選手権(ハンガリー・ブダペスト)
【女子】アレクサンドラ・トルソワ(ロシア)2018年3月世界ジュニア選手権(ブルガリア・ソフィア)
▽サルコー
【男子】ティモシー・ゲーブル(米国)1998年3月ジュニアGPファイナル(スイス・ローザンヌ)
【女子】安藤美姫(日本)2002年12月ジュニアGPファイナル(オランダ・ハーグ)
▽ルッツ
【男子】ブランドン・ムロズ(米国)2011年9月コロラドスプリングズ(全米協会主催大会)
【女子】アレクサンドラ・トルソワ(ロシア)2018年10月ジュニアGPアルメニア(アルメニア・エレバン)
▽フリップ
【男子】宇野昌磨(日本)2016年4月チームチャレンジカップ(3大陸対抗戦=米スポケーン)
【女子】アレクサンドラ・トルソワ(ロシア)2019年12月ジュニアGPファイナル(イタリア・トリノ)
▽ループ
【男子】羽生結弦(日本)2016年9月オータムクラシック(カナダ・モントリオール)
【女子】なし
▽アクセル
【男子】なし
【女子】なし
かつては相対評価の6点満点方式だったが、2002年ソルトレークシティー五輪の不正採点事件を機に透明性を高めるため、04-05年シーズンから上限のない加点方式を導入した。ジャンプやスピンなど要素ごとに難度に応じた基礎点を定め、出来栄えでジャッジが加点。減点した合計が技術点で、技のつなぎなど表現力を示す5項目を得点化した演技構成点と合算して争う。世界歴代最高は男子がネーサン・チェン(米国)の335・30点、女子はカミラ・ワリエワ(ロシア)の272・71点。
五輪では1908年ロンドン、20年アントワープの夏季大会で実施されたが、冬季大会では第1回となる24年シャモニー大会から正式種目として男女シングル、ペアが採用。76年インスブルック大会からアイスダンスが正式種目に加わった。
日本勢では伊藤みどりが92年アルベールビル大会で2位となり、初のメダルを獲得。06年トリノ大会で荒川静香が初の金メダルに輝いた。10年バンクーバー大会では、高橋大輔が日本男子初となる銅メダルを獲得。女子の浅田真央も銀メダルに輝いた。14年ソチ、18年平昌大会で羽生結弦が連覇を果たした。
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