もう平野は4年後の北京五輪のビジョンを描いていた。首に掛かるメダルの色を次こそ金にするために。
「1440(4回転技)を3つ。今後、勝ち続けるために必要だと思います」
今回は「フロントサイドダブルコーク1440(DC14)-キャバレリアル(キャブ)DC14」と4回転技を連続で決めたが、それを同じく成功させた06年、10年大会金メダルのショーン・ホワイト(米国)に屈した。次なる進化として「バックサイドDC14」の完成を掲げる。まだ世界で誰も成功していない大技を最後のジャンプに入れ、連続4回転と融合させた究極の演技構成こそが目指す「新しいマニュアル」とした。
一方、美学は変わらず貫く。ホワイトは派手なパフォーマンスでも会場を沸かせた。だが「引きつけるのは自分は苦手なのか、(ホワイトと)同じようなフィニッシュ後の表現はできない。滑り1本、ラン1つで、みんなを認めさせることを目指すのは今後も変わらず続けたい」と言った。
その前に、2年後の東京五輪も青写真にある。スケートボードでの挑戦だ。残り2年半と限られた時間で「ハードなトレーニングになる」と、まだ明確に決断していないとした上で「しっかり整理して考え、当然可能性があれば考えてはいます」。公の場で出場を視野に入れていることを初めて明かした。
実家の新潟・村上市の日本海スケートパークは19年春にリニューアルされる。東京五輪の種目になっている「パーク」の施設も設置。国内でも数少ない国際大会可能な規模となる。日大スポーツ科学部の校舎にもスケートボードの練習場が完成している。東京を目指す環境は整っている。決して言葉は多くない。それでも平野は人を魅了する。【上田悠太】
◆バックサイドダブルコーク1440 右足が前になるグーフィースタンスの平野の場合は、反時計回りに回転する。コークは軸が縦(斜め)のスピンで、ダブルコークならば縦2回転。トリック名称の後の数字は、横回転のスピンを表し、1440ならば「360度×4」で横4回転を意味する。