池江日本新3連発バタ6位 肉体強化で「手?足?」

 五輪初出場の池江璃花子(16=ルネサンス亀戸)が100メートルバタフライ決勝で、予選から3連発となる日本新記録をたたき出し、56秒86で6位入賞を果たした。予選で57秒27、準決勝で57秒05といずれも日本新記録を連発してきたスーパー16歳は、とうとう最後まで記録ラッシュでこの種目を終えた。五輪の予選、準決勝、決勝で日本新記録3連続は極めて異例。

 レース後の池江は「緊張していました。とにかく56秒台を出すことができて、メダルは取れなかったですけど、自己ベストを更新することができてうれしいです」と、息を弾ませながら喜びを口にした。すぐに気持ちは切り替わった様子で、2020年東京五輪へ向けて「同い年の子(カナダのオレクシアック=56秒46)が2番なので、食らい付いていきたい」と、4年後へイメージを膨らませる。

 その類いまれな成長曲線は、恵まれた肉体が支える。186センチの長いリーチを誇る腕で水を力強くかく。昨年世界選手権では、外国選手に恐怖感を抱いたが、それは実績があるからではなく、単に体が大きいから。池江の記憶にあるのは前回ロンドン五輪。最近まで強豪外国人に一切興味がなし。彼女たちのサイズに慣れた今回は、ひるむことなく、伸び伸びと泳ぎ、驚異的に記録を更新。あっという間に決勝にまでたどり着いた。

 根っからの負けず嫌いが、大舞台で生きた。6日の100メートルバタフライ準決勝。後半の失速を警戒して前半を抑えめに入ると、ターン直後に「6番くらいかも。これはさすがに負けられない」とギアチェンジ。予選に続き、自身の日本記録を更新した。初めての五輪も、いざスタートすると、国内大会と変わらない負けん気が頭をもたげる。それは決勝レースでも生きた。

 生まれたときから水の中にいた。母美由紀さんは自宅の浴槽で水中出産。まさに水の申し子として、この世に生を受けた。握ることが運動を含め発達神経に良いと聞いた母は、自分の指に生後6カ月の璃花子をぶら下げる。すると、2歳で逆上がりをマスター。自宅ではリビングの天井に設置された雲梯にぶら下がりながら、テレビを見たり、会話を楽しんだ。腕の力は強化され、肩甲骨の動きも可動域が広がり柔軟に良化した。それが水泳にも確実に生きた。

 昨秋から本格的なトレーニングも開始。たまの帰宅のとき、隣に寝た母が何げなく腕を触ると「手か足かわからなかった」というほど、肉体は強化された。4月に採寸した五輪の公式服は出国前の7月にはピチピチになるほど。成長期の16歳の肉体の進化は著しい。底知れぬ記録更新につながっている。

 小学校時代から五輪出場を夢見た。当時指導した東京ドルフィンクラブの清水桂コーチは小学3年のときに、池江からオリンピックのイラストをもらったことがある。そこには池江をイメージした女の子の姿が描かれており、その横に「オリンピックで優勝した」と記してあった。「断定しているところが、彼女のすごいところかもしれない」と清水コーチ。先日も日本新記録を祝福するメールに「次は世界だね」と書くと「あるかも」と返信がきた。

 4年後の東京大会の目標は金メダル。恵まれた体と強い心、そして限界をつくらない思考を持つ16歳に、限りない可能性が広がる。【田口潤】

おすすめ情報PR

スポーツニュースランキング