錦織銅メダル引き寄せた糸革命、伸びる球で効果実感
錦織圭(26=日清食品)の五輪の銅メダル獲得には、ある秘密があった。今季から、ラケットに張る糸(ストリングス)の縦糸と横糸を入れ替えていた。過去何度か試しながら試合での使用は控えていたが、体力強化の成果で使いこなせるようになり、解禁したという。
ストリングスには、大別して、牛の腸を編んでつくる天然素材のナチュラル(N)と、ポリエステル(P)などの人工素材がある。錦織は昨季まで縦糸にP、横糸にNを張っていた。だが、今季から「トップ選手に負けない球が打ちたかった」という理由で入れ替えた。縦糸にN、横糸にP。「コントロールも良くなり飛びが良くなった。球が自然と伸びるようになった」と効果を実感している。
球が直接当たるストリングスの種類や、それを張る張力は勝敗の鍵を握る。特に、張力の0・1ポンド(0・045キログラム)差まで感じ取れる錦織は、ストリングスに対して繊細。入れ替えは一大決心だった。「今年までも何回かトライした。その度にコントロールができなくて、変なところに球が飛んでいた」と打ち明ける。
準優勝した14年全米で錦織のストリングスを張った細谷理氏によると、Nは弾力があるために飛びが良く、Pは耐久性に富む。長い縦糸にNを使うと、その長さの分だけ飛びが良くなるが、安定性を欠くため、横糸のPで補う。錦織は「体が変わってきて、この配分(の衝撃)に耐えられるようになった。だから、いい結果につながっている」と言う。
今季はマスターズ大会2大会で準優勝、五輪では銅メダル。秘密兵器の使用解禁で、4大大会とマスターズ大会の初優勝も遠くない。【吉松忠弘】