【ボートレース】住之江で思い出した多摩川オールスターでの菅章哉の涙、まくり屋の誇りとは…

住之江で仕事をしながら、津の一般戦にも注目していた。15日の優勝戦、6枠菅章哉(35=徳島)は5着に終わった。6コースからチルト3度で絞ったがまくり切れず…。このシリーズでは1走目が3カド一撃。準優も3カドからまくったが差されて2着。結果は優勝戦5着でも、“らしい”走りを見せた。もう吹っ切れたのかな…そんな思いが頭をよぎった。

まくりのスペシャリスト、菅章哉はボートファンの誰もが気になる存在だ
まくりのスペシャリスト、菅章哉はボートファンの誰もが気になる存在だ

話は5月多摩川のSGオールスターにさかのぼる。菅は泣いていた。3日目9R、4枠の菅は6コースからまくった。5コースで抵抗した井口佳典はエンスト失格となり、菅は1着となったが不良航法。6着、6着、落水で迎えた4走目だった。レース後、勝利者インタビューで涙を流した。なぜ泣いたのか。真意を聞いた。

菅 一番、やってはいけないレースをやってしまった。半艇身前にいて、「行こう」と思った。ちょっとしたことなんです。自分があとコンマ何秒、寄せるのを遅くすれば…。そもそも、自分がもっと伸びを仕上げていたら、ああはならない。いろいろ考えて、僕、ほんまにセンスないなと思って…。それで泣けてきました。力不足です。

伏線があった。前日の2日目9R、菅は5コースから絞りまくりを放ったが、イン森高一真と競って落水した。あと1歩だった。

菅 2日目のことがあって修正した。(落水の)あのレースはターンマークを頂点に回りにいこうとしたのを、先に回られた。今日(3日目)は締めることを優先した。結果、気持ちのぶつかり合いみたいになってしまった…。

井口とて自分の仕上がりに自信があるから、受け止められると思って抵抗しているはず。結果は事故になった。不運なアクシデントと言ってもいい。気持ちがぶつかり合うのも必然ではないか。記者はそう感じるが、菅は泣いていた。

「6コースの方が全員引き波にはめられる」「外の方が角度でまくれる」「僕はアウト屋ではない、まくりたいだけ」。今まで何度もこだわりを聞いたが、涙を見るのは初めてだった。無事故でこそ価値がある-それが彼の誇り、自負なのだと感じた。

その事故の直後、4日目1R(2枠)は、チルト0度でスローの2コースから4着。ただ、後半7Rは4カドからまくった。

菅 前半は立ち直れなかった。オールスターだから立ち直れました。出場させてくれて、投票してくれてありがとうございます、です。

元来、心優しい男だ。オールスターの前検日、「内ならチルト0度で」と言った。1枠で迎えた1走目、チルト3度で4カドから6着だった。「どうして気が変わったのか」と聞くと、何とも気持ちのいい答えが返ってきた。

菅 インから行くつもりでした。でも、開会式で「今日しか来れない人いますか?」って聞いたら、ほとんどの人が手を挙げた。これは、3度でまくらんとあかんなと。慌てて調整してペラをやって、結果は6着だったけど、僕はインを捨てて負けにいったわけではない。僕に投票してくれる方は、それしか期待していない。例えば、ドジャースの試合を見にいって、「今日は大谷翔平選手は休養です」って言われても、その人は半年前からチケット取っているわけですよ。どんな気分なんだろうって…そう考えて3度でいった。

SGの常連ではないが、オールスターは3年連続出場。人気は高い。昨年芦屋大会は1勝もできなかったが、今年は3勝。紆余(うよ)曲折があったSGを終えて成長したのではないか、と書くとおこがましいかもしれない。ただ、津で本来の走りを見せてくれたことがうれしい。

胸のすくような一撃を、これからも見せてくれるだろう。「今日は菅、どこ走ってたっけ」。そう思っているファンは、きっと全国にたくさんいる。【網孝広】

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