【ボートレース】元グラドル、現在ボートレース実況の辻村ゆりなさん/大時計の向こう側
2022年4月に元グラビアアイドルからボートレースの実況アナウンサーへ華麗な転身を遂げた辻村ゆりなさん(29)。デビューまでの詳細はこちら
元グラドル辻村ゆりなさん 江戸川ボートレース実況アナへ華麗な転身/その1
元グラドル辻村ゆりなさん 江戸川ボートレース実況アナへ華麗な転身/その2
で詳しく報じられたが、あれから約2年。6月のボートレース江戸川でついに、見習い期間も終了。晴れて全レース実況の独り立ちを果たした。本格実況デビューした今、グラドル時代からの変化と現況を語ってくれた。
辻村ゆりな(以下、辻) 2022年4月にボートレース江戸川で実況デビューして、最初は前半2レースまで、でした。それから半年は2レースまでやって、1年たたないくらいで3レースまで実況するようになって。前半6レースの実況になったのは今年(2024年)に入ってからです。だから実況研修はまるまる2年を積んだ形ですね。最初の1年は緊張との戦い、反省との繰り返しでした。とにかく自分の実況を聞き直して「ひとことメモ」みたいなのを取るようにしていて。最初は出走表の端っこにメモ程度だったんですが、去年くらいからは振り返って自分の実況で「あ~、ここできなかった~」って思うのと、後で映像と合わせて見返した時に「ここができてない」「意外と見落としていた」ポイントとかを書くようにして。私、ここしか見てないで実況してた…、後ろでこんなことがあったんだ、とか。改めての気づきがありました。
辻 (2024年6月25~28日のボートレース江戸川で)1節間、実況してみてすごくばたばたしてしまったな、と。それまでは研修で前半3Rまでとか6Rまでだったから、前半レース分に実況準備の時間を集中すればいいって。今までは前半レースまでしかなかったけど、全レースやると当然、2回乗りの選手が出てくる。だから今のレースがどんな展開だったかを振り返りながら後半レースの準備をしないといけなくて。それを踏まえて先々のレースをみて、それでも次のレースのオッズとか水面状況も見なきゃいけなくて。私は今、何の準備をしているんだろう、って途中で混乱することが何回かありました。
-実況する1日のルーティンを教えて下さい
辻 朝は午前9時40分くらいにボートレース江戸川に到着して開門する午前10時前にマイクチェック。1Rのスタート展示までに準備するものは…。私の場合、出走表を拡大コピーした上で、マーカーで枠番の色を塗って。出走選手名のふりがなを振って、それを1Rごとに切り離してノートに貼って、を繰り返します。その作業から始まります。今までは前半レース分で良かったからすぐ終わってたのが、12R分をやるとそれだけで約50分かかってしまう。だから1Rまでには当然終わらなくて、資料作りと実況を並行しながらやる形です。そのうち慣れたらもっと効率よくできるのでは、と思うのですが。今は目の前のレースと過去のレースと先のレースを行ったり来たり。手元も頭も、ずっとごちゃごちゃでした(笑い)
-その件に関してボートレース江戸川実況で辻村さんの師匠、平山信一アナウンサー、先輩の田島美生アナウンサーからはどんなアドバイスを
辻 平山さんは手元にメモ等をあまり置かないのに対して、田島さんはきれいな原稿を準備するタイプ。平山さんのように最小限の準備でしゃべれるのが理想かもしれませんが、自分には田島さんのスタイルが合っていると思って、田島さんが作成する実況ノートをまねさせていただいてます。田島さんは、入念に書き込んで調べていらっしゃるので、しゃべりの基本は平山さん、準備の仕方は田島さんの準備されるノートを全部まねして学んでいます。おふたりのいいとこ取り、ハイブリッドですね(笑い)
-実況独り立ちしたことでのしゃべりの変化など
辻 やっぱり、自分の表現の乏しさに気づかされました。ボートレース江戸川は競り合いが特に多いから、レースが終わった時に全レース自分の実況リプレーを聞いてみると「また同じ表現使ってる」っていうのが多くて。師匠の平山さんは、そういうところの実況の引き出しが多いです。今は実況の引き出しを多く作っている段階です。そこは師匠からご指摘頂いて、何回か『次のレースから、このワードは使用禁止ね』って課題を出されたことがあります。違う表現を考えて、ってことですね。もちろん、(実況中に)言い間違いやミスは起こるのですが、前に比べたらできるようになったとは思います。前は言い間違えに気が付かなくて実況リプレーを聞いて「私、間違えてる」って。最初の1年はそういうことが多くて。でも多少、余裕が出てくると自分が言った言葉がちょっとずつ自分の耳に聞こえるようになる。間違えたら即座に訂正するっていうのが必要なところだって気が付きました。
-ボートレース江戸川の実況アナが他場と少し違うのは、実況アナが時としてピットリポートやMC、インタビューも担当されることだ
辻 展開予想コーナーでの元記念レーサーの桑原淳一さんとの掛け合いとか、ピットリポートとかはフリーアナウンサーで前任者・瀬戸沙織さんのお仕事の仕方を踏襲しています。優勝者インタビューとか準優インタビューとかでは、ボートレーサーの皆さんに初めまして、ではさすがに失礼なので、節間、調子がいいなって思う選手には積極的に話しかけたりして話しやすい環境作りを意識しています。
-いろんな皆さんからいい部分を吸収されて仕事している
辻 実況以外にもピットリポートや優勝者表彰のMCとかもやらせて頂いて。先ほどもお話ししたように実況は平山さん、田島さんのいいところを頂いて。ピットリポートは瀬戸さんからいいところをもらって。自分のオリジナリティーはあまりない気はする。今もそこは探し中です。私の個性というか。ただ、良く言えば万能というか、どこでもこなせるポジションに収まれていると考えると、他に(こうしたポジションで働いていらっしゃる方が)そう多くないとも思ってもいるので。その場、その場で自分の立ち位置や色を変えられるのが、私の売り? そうかもしれないですね。実はグラビアアイドル時代から、ずっと自分のキャラクターがないことは悩みだったんですよ。でも、1周回って、『私というのはこれ!』っていうのは無くていいのかも、って思うこともあるんです。だからどこでも、はまれるポジションでいられたらうれしいです。
-辻村さんは例えると柔軟に形を変えるジグソーパズルの肝心なピースの1つ
辻 その表現は面白いですね。それ。この子がいれば穴埋めできるってイメージですね。自分の色を探しているけど、いい形での接着剤や中和剤みたいな存在になれたらうれしいです。
-2018年に江戸川ピットリポートデビューから6年、実況を始めて2年
辻 実況の実力もまだまだだし、人によっては私の声が聞きづらいと思うこともあると思うんです。だけど、自分の性格で考えると、ボートレース実況という、駄目だったという反省点を生かして次に、っていうこつこつやる部分は自分の性格に合っていると思います。自分が実況に向いているか不向きかは分からないんですが、実況はやっていて楽しいなって。もっとうまくなりたいという向上心があるから、そういう意味では向き合っていける職業だと思います。ボートレース江戸川のスーパーサブって言葉がすごくしっくり来ていて。ボートレース江戸川でずっとお世話になってきたから、何でもいいからずっと江戸川で貢献できる人間で居たいな、ってのはありますね。今は江戸川の実況といえば平山さん、田島さん。ピットリポートと言えば桑原淳一さんと瀬戸沙織さんっていうのがあるけど、『辻村ちゃんも何だかんだ江戸川の一員だよね~』って皆さんに思ってもらえるようにキャリアを積んでいければ。
-最後にひと言
辻 まだまだ成長途中ですけど、この実況を始めたこの2年間でいろいろ反省を繰り返しながら実践できるのはなかなかないことです。楽しい、そしてありがたい仕事場です。それを許してくれる平山師匠。そして田島さんも、『このレースのリプレイは見てね』とか特殊な事象が起きた時に送ってくれる。小まめなサポートとフォローが、さらなる成長を促す材料になっていると思います。私の中のポリシーとしてるのは「準備を怠らない」です。ありがちですけど、どんな仕事に対してもちゃんと向き合いたい。「準備不足」をいいわけにはしないようにします。
◆師匠の平山信一アナウンサー「あれですよ、(実況アナは)普通に3周回った時の実況は誰でもできるんですよ。辻村さんは何かあった時の対処に関してはだいぶうまくなったな、って思います。改めて実況アナウンサーというのは、お客さんにこういうレースでしたよ、と提供するのが仕事。ボートレース江戸川の次節G2「江戸川634杯 モーターボート大賞」(2024年7月16~21日)は彼女は前半(1~6R)実況担当なんですが…。実は今、考えていたんですが、もうがんがん実況をやらせてみようと。634杯のドリーム戦を実況させようと」
辻 えっ、うそだうそだ~。真面目な話ですか?
平山(以下、平) どうせならやっておいたほうがいい。いずれはドリーム戦実況をやるんだから、そうそう。
辻 え、本当にですか。じゃあ、2日目でお願いします、
平 じゃあ2日目ね。じゃあ2日目は前後半、入れ替えます。今、決めた。
辻村 本当ですか! 記念のドリーム…。
平 実況している自分を冷静に聞いている自分に置き換えるのは重要ですよ。そこの部分もだいぶ、上達したなぁと思うし、もう普通に聞けますよ。後は場数ですよ。だから(彼女の実況に関しては)太鼓判なんで。江戸川634杯の次のG3「アサヒビールカップ」(2024年7月30~8月4日)は僕が後ろに付かないで辻村アナ1人ですべてやってもらいます。G3の優勝戦で完全な実況独り立ちですよ。
取材最後に思わぬサプライズ発表もありましたが、辻村アナは7月17日のボートレース江戸川G2モーターボート大賞2日目で初めて記念ドリーム戦実況の予定です。こつこつと実況の努力を続ける辻村ゆりなアナ、「なんとかいい記事にしてあげてくださいね」と、弟子を気にかける平山信一アナ。そして辻村アナの成長に手を貸し見守る田島美生アナ。ボートレース江戸川の実況を支える3人のチームワークは抜群です。【木村重成】