【競輪】選手の心も震わせた熊本競輪再開「声援がヤバすぎて、駆けたくなっちゃいました」
熊本競輪再開に沸く観客席の様子をお届けした中嶋聡史記者の「敢闘門の向こう側」に続き、今回は再開シリーズの検車場内の様子をつづった音無剛記者の「敢闘門-」をお届けします。
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「8年ぶりに再開して、多くのみなさまと喜びを共有できるのをうれしく思う。多くのご支援をいただきありがとうございます」
7月20日、大西一史熊本市長の開会宣言で「熊本競輪再建記念」が開幕した。16年4月の熊本地震から8年-。熊本に競輪が帰ってきた。
「熊本競輪場を走ってこそ、本当の復興」と言い続けてきた中川誠一郎は前検日から感慨深げだった。「満腹。幸せですね。この雰囲気を見ているだけで、うれしい。ここまでは、と思っていたので肩の荷が下ります」。地元開幕戦で1着を取ることはできなかった。それでも大声援に背中を押され、最終日の特選10Rでは自力を出した。精いっぱいのことはやった。
初日は開門前から300人が列を作り、初日の場内は前半戦から再開を待ちわびた競輪ファンであふれていた。オープニングレースの1番車だった半田誠は、もちろん地元戦を走るのが初めて。想像以上の大声援に平常心で走ることは困難だった。「声援がヤバすぎて、駆けたくなっちゃいました。でも本当に力になりました。ここの1着だけは欲しいと思っていたので悔しいですね」。レース後に「悔しさは決勝で晴らす」と話していた。その言葉通り、準決を1着で突破して決勝に進出。決勝では松本秀之慎とワンツー(半田は2着)と有意義なシリーズにした。
地元勢最年長の倉岡慎太郎でも、さすがにこみ上げてくるものがあった。「本当に戻ってきたなって感じ。8年も空いたのに、これだけのお客さんが残っていてくれた。それがありがたい。僕もこれで、あと2年はやれそう。次は1着を取って、お客さんの前に立ちたいね」。開幕戦の雰囲気は、大ベテランのやる気スイッチにも火をつけた。
A級は松本秀之慎、S級は嘉永泰斗と地元勢がアベック優勝だった。北井佑季を破って地元開幕戦を飾った嘉永は「久留米での地元開催も気合が入ったが、また違った雰囲気だったし、いいところで走れました。これが地元だなって感じで。地元Vはまだスタートで今度はG3優勝を目指してまた頑張っていきます」とコメント。最高の盛り上がりでシリーズ3日間の幕を下ろした。【音無剛】