【競輪】こんなのアリ? 南関7車の結束

8月27日まで開催された小田原競輪G3「北条早雲杯争奪戦」は、6人を決勝に送り込んだ地元の神奈川勢が、脇本雄太に付け入る隙を与えなかった。鈴木裕も含め7人で結束した南関が、3段ロケットを発射。エース郡司浩平の優勝で大団円となった。

優勝した郡司浩平を胴上げする神奈川勢
優勝した郡司浩平を胴上げする神奈川勢

今年すでに2人のG1ウイナーを輩出した神奈川の勢いは本物だ。今大会は特選シードの4人だけでなく、予選組の奮闘も光った。

ベテランの松坂洋平は、「自力が僕と桐山敬太郎ぐらいしかいなかった当時は、2本の竹やりで戦っていたようなもの。今は本当に頼もしくなった」と、10年前の環境と今を比べて感慨に浸った。

兄貴分の松坂洋平は後輩たちの成長に目を細めた
兄貴分の松坂洋平は後輩たちの成長に目を細めた

強い者に立ち向かう勇者はファンの喝采を浴びる。しかし、巨大化した軍勢は面白みに欠ける。南関の結束にネット上では批判の矛先が向いた。

実に6人を決勝へと送り込んだ神奈川勢
実に6人を決勝へと送り込んだ神奈川勢

なぜ、こうなったのか?

オリンピックで開催国がメダル数を増やすように、競輪も地元地区は「3割増しの強さで考えろ」が定説だ。今回は平塚でのG1オールスター直後だったこともあり、疲労を差し引いても、地元勢の仕上がりが素晴らしかった。

施行側があっせんの希望を出す段階では、まだ北井佑季はタイトルを獲る前だったし、松井宏佑や和田真久留もここまで競走得点は高くなかった。当初は特選に4人も乗る想定ではなかったはずだ。

神奈川勢の強さのピークがここに集結してしまった。

2月のG3奈良記念を引き合いに出し、「近畿なら別線でガチンコの力勝負をしていたはずだ」と南関を揶揄(やゆ)する声が多かった。はたしてそうだろうか?

奈良のケースは、同じ近畿であっても、分かれやすい組み合わせだった。たとえば向日町記念の決勝に京都6人、和歌山1人が決勝に乗ったとして、ラインを2つや3つに分けていいのか、自分に答えは見つからない。

もし新村穣、郡司浩平の川崎組と、残り4人の平塚組に分かれたとする。鈴木裕が川崎チームに加わってもいい。この2つがたたき合い、脇本にまくられでもしたら、それこそ「南関7人もいて何やってんの?」である。

圧倒的に地元優勢の今回の準決で、何とか牙城を崩そうと必死に追い上げた54歳の山口富生の勇姿は胸を打った。こういう頑張りを競輪ファンが好むということはよく分かる。

S1最年長の山口富生は果敢に地元勢へと立ち向かった
S1最年長の山口富生は果敢に地元勢へと立ち向かった

今回の南関作戦が、今後のラインの在り方に一石を投じたのは間違いない。あっせんや番組編成においても課題が残った。

ただ、強者に挑み続けてきた北井佑季や松井宏佑が、強者の側に回った途端に手のひらを返されるのは切なく、かつての脇本雄太の姿とかぶって見えて仕方ない。

北井佑季(左)と松井宏佑の成長が神奈川王国を巨大にした
北井佑季(左)と松井宏佑の成長が神奈川王国を巨大にした

脇本に勝たせないためにまとまった南関だったが、同じラインの中ではガチンコの勝負をしていた。ホームから番手まくりを打った北井は、松井がバックで出ようとしても諦めずに踏み続けていた。郡司に差された松井の悔しそうな表情にウソはなかったことも付け加えておく。【松井律】

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