【競輪】アフロヘアの超新星 どこまで伸びる無傷15連勝/敢闘門の向こう側
競輪、楽しんでいますか?
23日に終了した小田原F1は吉沢純平のVで幕を閉じた。4車結束で2段駆けに出た地元南関勢を、中団からのまくり気味の追い込みで仕留める鮮やかな逆転勝利。ただ1人の単騎でもあり、4月岐阜以来今年3度目のVは格別の味だったろう。
今開催は連日、小田原にしては珍しいほどの強風が吹き荒れ、時折雷雨にも襲われる悪天候。そんな中、準決では別線に番手に入られながらも2周以上駆けて2着に残るなど、随所でパワフルさが光った。「自分は冬場が得意だし(他が苦にする分)悪条件の方がいいかもしれませんね」と笑う。今年終盤、特にバンク状況が悪い時には吉沢の出番が増えてきそうだ。おめでとう!
さて、強いといえば125期の新人・中石湊だ。チャレンジを無傷9連勝で突破し、昇班戦の前場所函館でも完全Vを飾っての小田原参戦。前検日に「33バンクは初めてなので」と不安そうな表情を浮かべていたが、終わってみれば3日間全く危なげない走りで完全V(チャレンジからトータル15連勝)を決めてみせた。ダッシュ力、スピードの持続力、末の粘りともに申し分なく、「(過剰なライバル心を燃やしてくる)同期が相手のチャレンジよりも1、2班戦の方が走りやすいかもしれません」と言うのだから、次走取手(10月4日~)でS級特昇を決める可能性は高い。
スタートが速く確実にSは取れるが、だからといって、突っ張り先行一辺倒という訳ではない。相手の出方、番手選手の付きやすさなどをしっかり考え、レースの流れに応じて突っ張り、引いてのカマシを使い分ける能力と冷静さを併せ持つ。小田原決勝では別線から波を作られたり、厳しいけん制を受けたりしたが、難なくかわして堂々と押し切った。仮にヨコの走りが必要な場面が来たとしても、楽にクリアできる強靱(きょうじん)な体幹が感じられた。
大阪出身だが縁あって大森慶一の門をたたき、北海道所属でデビュー。ただ、選手養成所時代からナショナルチームBに招集されていたことで、練習拠点は伊豆に置いている。憧れの山崎賢人ばりのアフロヘアがひときわ目を引き、キャラも十分に立っている。
28年ロサンゼルス五輪メダルに照準を合わせ「ケイリンとスプリントで狙っていきたい」と言葉に力を込める19歳。近年やや元気がない北海道競輪界の救世主になると同時に、世界の舞台で活躍する存在になることを切に願う。【栗田文人】