【競輪】山崎芳仁の長男・歩夢の素顔「親譲りの強くて愛されキャラ」/敢闘門の向こう側
競輪、楽しんでいますか?
20日に終了した川崎ミッドナイト競輪は125期新人・山崎歩夢(19=福島)の完全Vで幕を閉じた。
山崎といえばあの山崎芳仁の長男として注目され、父譲りのパワーとスピードで養成所時代から評判だったことはよく知られている。今開催も3日間とも圧倒的な内容で、予選は強風の中、目測で2着に20車身差をつける圧勝劇。単騎で戦った決勝も後方からエンジンの違いを見せつけるまくり完勝だった。デビュー前、父の弟・司が「(歩夢は)兄貴よりもずっと強い。特にダッシュがすごい」と話していたが、まさにその通りだった。
父譲りなのは脚力だけではない。父は「4回転モンスター」として一時代を築いた当時から「愛され&天然キャラ」で知られ、ファン、関係者からは「ヤマちゃん」として親しまれている。歩夢もそんな「ほんわか」ムードの持ち主で、笑顔を絶やさず礼儀正しく、周りの視線が自身に注がれていることが分かっていても変な力みは全くない。常に自然体で人と接することができる性格は天性のものだ。
もちろん本人も反省しているだろうが、養成所の卒業記念では、衆目を集めた(父も見ていた)初戦で、まだ隊列も定まらないうちに落車。ルーキーシリーズを経た本格デビュー戦ではいきなり先頭員早期追い抜きで失格という、どこか「緩~い」感じも、個人的には魅力を感じてしまう(もちろん、落車、失格は良くないが)。
ペナルティーなどで実戦から離れた丸4カ月間は、父とのマンツーマンでひたすら体を鍛え抜く日々。「練習しかすることがありませんでした」の言葉通り、この期間にさらにパワーアップしたことは想像に難くない。
ただ、実戦復帰を前に父から掛けられた言葉がまた、どうしても笑いを誘ってしまう。
「走る前に、まずルールだぞ」
福島生まれだが、小学生から中学生までは東日本大震災のため家族で移住した沖縄で育った。「自転車を始めたのは福島に戻った高校から。それまでは帰宅部でした」と言うのだから驚く。父と競輪学校(現養成所)の同期同班だった高橋由記(群馬)は「ヨッちゃん(芳仁)が言うには、(歩夢は)キャリアが浅いので、自転車の苦しさをまだあまり感じていないのがいいみたいだね」と言う。父が無理に自転車を勧めず、本人がやりたくなるまで待ったことが良かったのだろう。伸びしろは無限大だ。
桁違いに強かった父の卒記(準優勝、優勝は3番手から中を割った成田和也)も取材している私としては、偉そうなことを言わせてもらえれば、どこか「孫」の走りを見ている思い。このまま1、2班戦まで18連勝してS級特昇の可能性は十分。そして、近い将来にはビッグレースで親子連係が実現!? そんなことを夢見させてくれる超新星だ。【栗田文人】