涙を無駄にはできない。ヒーローインタビューで言葉を詰まらせた。J2に降格した22年は7位、昨季はJ1復帰からほど遠い16位。「昨年はふがいない成績で、何かを懸けて戦う試合が2年間なかったので…」と、大きな勝利に感極まった。今季は副主将、シーズン途中からはゲームキャプテンと重圧のかかる立場も経験。「『勝てなかったらどうしよう』じゃないですけど、ちょっとは考えましたね、人なので。ただ『勝たせたい』思いの方が強かったです。責任感が強くなった半年間でした」。
宮城出身で、仙台アカデミー出身でもある。「アカデミーの子がボールボーイをしてくれて、街に行けば小さい子も声をかけてくれるので、そういう子たちのヒーローになりたいです」と強い思いを抱える。この日の朝、カーテンを開けた瞬間「今日はいける」と思った直感は正しかった。クラブ設立30周年の節目。次の歴史の1ページには、J1復帰のプロローグを描く。【木村有優】
○…就任1年目で、森山監督がPO出場へ導いた。前節ロアッソ熊本戦では1-3で逆転負けし、崖っぷちの大一番で白星。最終戦セレモニーのあいさつでは「選手がどうしても満員のユアテックスタジアムで決めたいというので、先週は負けて帰って参りました」と笑いを誘った。「僕は仙台のサポーターが日本一だと思っています。一番下の6位ですけど、上位にかみついて、かみついていきます!」と力強く口にした。
○…18年間のプロ生活に、地元仙台で終止符を打った。今季限りでの引退を発表した仙台MF遠藤康(36)の引退セレモニーが最終戦後に行われた。07年にJ1鹿島アントラーズでプロキャリアをスタート。15シーズンを同チームで過ごしたのち、22年に仙台に加入。J1では通算304試合46ゴール、J2では通算48試合6ゴールをマークした。
今季はけがの影響もあり、出場は開幕戦の1試合にとどまった。あいさつでは時折、目頭を押さえながら一言、一言をかみしめた。「このピッチの上でチームを勝たせられなくなったことです」と声を震わせながら引退理由を語った。「いつかは終わりが来ると思っていましたが、まさか地元仙台でこのような機会をもらえたことに本当に感謝しています」。今年は志願して主将も務めた。ピッチ上ではなくても、勝利に貢献してきた。大ベテランの花道を飾るためにも、全員でJ1昇格をつかみとる。
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