羽生結弦が金、弓弦羽神社の御利益あった

男子フリーで演技する羽生結弦(撮影・PNP)<ソチ五輪:フィギュアスケート>◇14日◇男子フリー

 19歳の羽生結弦(ANA)が、日本に待望の金メダルをもたらした。冒頭の4回転サルコーで転倒するなど2度のジャンプ失敗にも気持ちを切らさず、こん身の演技でカバー。SPで世界最高得点をたたき出した羽生は、そのアドバンテージを生かし、フリーでも1位(178・64点)となり合計280・09点。2位のパトリック・チャン(カナダ)を抑えて逃げ切った。羽生は、フィギュアの日本男子では五輪初の「金」となる快挙を達成した。

 フィギュアでは2006年トリノ五輪女子の荒川静香以来2人目で、男子では初となった。

 日本勢は、SP11位の町田樹(23=関大)は、合計253・42点の5位、高橋大輔(27=関大大学院)は合計250・67点で6位に終わった。

 19歳の若武者が、歴史に新たな1ページを刻んだ。SP首位で迎えたフリー演技。緊張のせいか、冒頭の4回転サルコーでいきなり転倒、3度目に予定していた3回転フリップでも着氷が乱れた。両手を突くなど本来の実力を発揮できなかった。それでも、流れるようなステップ、スピンと世界NO・1の技術で失敗をカバーした。

 演技を終えた羽生は、肩で呼吸を整えながら、疲労困ぱい。しばし動くことができなかった。

 暫定1位の羽生の後に残り3人。難敵パトリック・チャンもいた。“元世界王者”の得点は、羽生の得点をわずかに下回った。「驚きしかなかった。うれしいとかそういう感情はなく、自分の演技の悔しさしかなかったので」(羽生)。後続も羽生の得点を超えられず、ついに金メダルが確定した。フィギュアの男子では初の頂点。表彰台の中央に立ち「花束をもらって、うれしかった。早く(1日遅れで授与される金メダルを)見てみたいです」と笑顔をみせた。

 仙台出身の羽生は、東日本大震災で、自身が練習していたリンクも被災するなど大きな痛手を追った。3年前には、名前が似ていることから話題となった弓弦羽(ゆづるは)神社(神戸市東灘区)に母と参拝した。

 絵馬には「世界のトップになれますように…

 そして、東北の光となれるように!」と16歳の少年は世界一への決意と、復興の願いを込めていた。そんな少年はたくましく成長し、被災地にも勇気という名の「光」をソチから届けた。

 「結果としてすごいうれしいと思う反面悔しいと思うこともある」。快挙を達成した羽生だが、満足する様子はない。4年後の冬季五輪では「絶対王者」として、羽生は君臨するつもりだ。

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