14歳が背負った五輪新種目の重圧

[ 2014年1月25日13時17分

 紙面から ]欧州に向け出発するジャンプ女子ソチ五輪代表。左から伊藤、山田、高梨<連載:高梨沙羅

 初代女王のプレリュード第5回>

 デビューから順調に成長し続けた高梨だったが、初めて挫折を味わった。11年1月の大会で女子初の141メートルのジャンプを飛んだことなどが評価され、2月の世界選手権(オスロ)代表に同競技史上最年少で選出された。その頃、同競技はソチ五輪で新種目の最有力候補に挙げられており、同大会はいわば参考材料だった。高梨は「責任があるので出るだけではだめ。夢がつながるジャンプがしたい」と、ジャンプ女子界を背負う自覚とともに挑んだ。

 オーストリアで行われた直前のコンチネンタル杯を連勝し、メダルを射程圏に入れ、オスロに乗り込んだ。22日の公式練習で1人だけ3回ともK点を越えると、もう独り舞台。続く23日には1、2回目に102・5メートルを飛ぶと3回目は101メートルと100メートルジャンプを3回そろえるなど、他選手とは別次元にいた。「すごく調子がいい」と絶好調宣言も飛び出たが、本番でまさかの出来事が起こった。

 25日は朝から濃霧があたりを包んだ。着地地点さえ見えない真っ白な世界。今まで経験したことのない気象条件が、高梨に襲いかかった。1回目に92メートルで9位。メダル圏外に追いやられた。逆転を狙った2回目は93メートルで順位を3つ上げるのが精いっぱいだった。「緊張していたのかな」。大会後に振り返ったが、悪天候、初の大舞台でのメダルの重圧。14歳には酷だった。

 今、高梨は出られる大会のほとんどに出場する。多くのジャンプ台、過酷な移動、さまざまな天候の中で飛ぶことを求める。悔しさは決して忘れはしない。同じ過ちを2度と繰り返さないために…。【松末守司】(つづく)

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