ボルト無念の途中棄権幕切れも「ありがとう」呟き

<陸上:世界選手権>◇12日◇ロンドン◇男子400メートルリレー決勝

 陸上界のスーパースターが悲劇的な幕切れで競技人生を終えた。男子400メートルリレー決勝で、現役最後のレースに臨んだウサイン・ボルト(30)は5連覇を狙うジャマイカのアンカーで登場。30メートルほどで左脚を痛め途中棄権となった。

 英国、米国を追う3番手でバトンを受け、直線に入ってギアを入れたときだった。左太もも裏に激痛が走った。右足だけで跳びはねるように、前へ進んだがゴールまであと約20メートルで倒れ込んだ。無念の途中棄権。地元英国の優勝で大歓声が湧く競技場で、うずくまり、苦悶(くもん)の表情を浮かべた。

 ジャマイカチームの医師は左太もも裏のけいれんだったと明らかにした。チームメートのブレイクは「招集所でずいぶん待たされてウサインは本当に冷え切っていた。実際『これはクレイジーだと思うよ。40分も待たされて』と言っていた」と不満をあらわにした。

 生まれながらに背骨が曲がる障害を抱えながらトレーニングに励み「長身スプリンターは大成しない」との先入観を打ち破った。多額の奨学金が望める米国の大学には進まず母国で力をつけた。故郷の村に診療所を寄付し、出身校に約130万ドル(約1億4000万円)やバスを贈ったことも。世界でも祖国でも愛される存在だった。

 希代のスプリンターは「ありがとう。みんなに無限の愛を」とツイッターにメッセージを残した。最後まで強烈なインパクトをファンの記憶に刻みつけ、トラックに別れを告げた。

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