旭化成、ホンダなど4強か/ニューイヤー駅伝展望

 全日本実業団対抗駅伝(ニューイヤー駅伝)は18年1月1日、前橋市の群馬県庁前を発着点とする7区間(100キロ)で行われる。

 前回優勝の旭化成の2連覇か、15、16年に連覇したトヨタ自動車のV奪回か、あるいは大エース設楽悠太(26)を押し立てるホンダの初優勝か。日本選手権優勝者2人を擁す富士通も強力で、4強という見方もある。2年連続レース前半でトップに立ったDeNAと、九州予選で旭化成を破ったMHPSもダークホースとして注目される。コニカミノルタと日清食品グループも、優勝経験チームとして意地を見せてくるだろう。現時点でのエントリー予想をもとにレース展開を展望してみたい(正式区間エントリーは大会前日の12月31日に決定)。

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 【1区(12・3キロ)】出遅れが許されない区間で、近年はスローペースで進むことが多い。その傾向を逆手にとってハイペースに持ち込めば、仮に区間賞は逃したとしても、ライバルチームとの差を広げられるかもしれない。旭化成は鎧坂哲哉(27)村山紘太(24)茂木圭次郎(22)の3人が1区候補。3人とも今季は故障や体調不良があって万全のシーズンではないが、元々の力は他チームの1区選手よりも1枚上。復調していればハイペースに持ち込める。

 終盤のスパートで区間賞に届きそうなのは、前回大会の1区1位の日清食品グループ・戸田雅稀(24)、箱根駅伝1区区間賞のルーキー服部弾馬(22=トーエネック)、DeNAの上野裕一郎(32)か高橋優太(30)といった面々。中部予選1区で服部を抑えた石川裕之(24=愛三工業)、九州予選1区で井上大仁(24=MHPS)や市田孝(25=旭化成)と競り合った九電工の中村信一郎(24)も区間賞候補。九電工は3000メートル障害の全日本実業団陸上優勝者の東遊馬(22)が走る可能性もある。

 【2区(8・3キロ)】外国人の出場が認められている唯一の区間。リオ五輪1万メートル銀メダルのタヌイ(27=九電工)、8月のロンドン世界陸上同種目4位のカロキ(27=DeNA)が世界トップクラスの走りを見せる。

 前回は日立物流のディク(26)が区間2位の走りでトップに立った。区間賞のカロキはこの区間でチームを3位まで押し上げ、3区でDeNAがトップに立つお膳立てをした。

 そして今回は旭化成初の外国人選手として、キプヤティチ(24)が登場する。これまでは2区終了時で20位前後のことが多かったが、2区でトップ争いをする新しい旭化成が見られそうだ。

 MHPSは山梨学大から入社2年目のオムワンバ(22)が絶好調で、九州予選ではタヌイ、キプティチを抑えて区間賞を獲得した。先頭集団で3区につなぐだろう。

 トーエネックの服部と、大物新人の遠藤日向(19=住友電工)は、外国人を持たないチームに所属している。この区間でアフリカ勢を相手に力を試す可能性もある。

 【3区(13・6キロ)】最初からスピードを全開にして押し切らないといけない区間。優勝候補チームは2区までに出遅れても、3区で挽回できる選手を配してくる。4区に設楽悠が控えるホンダに対し、旭化成やトヨタ自動車、富士通はここで先行しておきたい。

 前回、トヨタ自動車は大石港与(29)が区間賞で20人抜きを見せ、DeNAは上野が区間2位でトップに躍り出た。旭化成は大六野が区間3位で9人抜き。この3人に加え、日本選手権5000メートル優勝の松枝博輝(24=富士通)も意欲を見せている。

 ホンダは山中秀仁(23)が有力視されている。個人種目の実績では劣るが、駅伝での強さは引けを取らない。上記のスピードランナーたちに混じって、トップと20秒以内の差で4区にタスキを渡したい。

 コニカミノルタは東日本予選で5位と大敗したが、21世紀に入ってニューイヤー駅伝優勝8回と強さは折り紙つき。菊地賢人(27)か谷川智浩(28)が、3区で間違いなく浮上してくるだろう。

 【4区(22・4キロ)】最長区間で各チームのエースが登場する。区間賞候補本命は9月にハーフマラソン日本記録を更新した設楽悠で、20秒程度の差なら逆転すると予想されている。トヨタ自動車は大石、窪田忍(26)、宮脇千博(26)とこの区間の候補が3人いる。旭化成は大六野か前回区間賞の市田孝が起用されそう。

 富士通、MHPS、DeNA、日清食品グループも先頭争いに加わりたい。MHPSは前回区間3位で、ロンドン世界陸上マラソン代表だった井上。富士通は横手健(24)か中村匠吾(25)。DeNAは東日本予選最長区間2区区間賞の室塚健太(31)、日清食品グループは北海道マラソン優勝の村澤明伸(26)が有力。

 上記チームは3区終了時点のポジション次第では、4区でトップに立てる。仮に設楽悠にリードを奪われても、5区以降で逆転するためには20秒以内の差にとどめる必要がある。

 前回2位のトヨタ自動車九州は、今井正人(33)と押川裕貴(27)の2枚看板を外して九州予選を5位で通過。エース2人が順調なら、4区で上がってくる。コニカミノルタも、福岡国際マラソンに出場した神野大地(24)の回復次第ではトップ近くで踏みとどまる。

 今季からコースが変更され、序盤に小さな起伏が続く。従来のように最初の5キロを13分台で飛ばすことは難しくなるかもしれない。粘りの走りができる選手がより優位になるだろう。

 【5区(15・8キロ)】この区間以降は向かい風が強くなる。単独走になっても強い選手が有利になるが、4区終了時のタイム差次第では、前回のように5区が3~4人の集団になる可能性もある。

 旭化成は前回区間賞の村山謙か復調した茂木、トヨタ自動車は宮脇か窪田、ホンダはリオ五輪マラソン代表だった石川末広(38)か向かい風に強い服部翔大(26)、富士通は中村か横手。MHPSは定方俊樹(25)を起用する予定で、日清食品グループは高瀬無量(28)か。

 【6区(12・1キロ)】2番目に距離が短い区間。選手層の厚さが現れる区間で、近年はここでリードを奪ったチームが優勝している。

 旭化成は前回区間新をマークした市田宏(25)、トヨタ自動車は15年と16年に連続して区間賞だった田中秀幸(27)が有力。勝ちパターンの再現を狙う。ホンダも前回、服部が区間3位と好走した。富士通も故障上がりとはいえ、3000メートル障害世界陸上代表の潰滝大記(24)を残すことができる。MHPSもキャプテンの木滑良(26)を6区に残していたら優勝を狙える。

 【7区(15・5キロ)】最終決戦区間。前回は旭化成がリオ五輪マラソン代表の佐々木悟(32)で逃げ切った。今回も佐々木や深津卓也(30)のマラソン選手になるか。市田宏の可能性もゼロではない。

 トヨタ自動車は2年前と同様に、山本修平(26)が優勝テープを切る役目か。新人の西山雄介(23)も調子を上げている。早川翼(27)を起用できるようなら、他チームには脅威となる。ホンダは東日本予選アンカーでトップに躍り出た松村優樹(24)か、佐野広明(29)、服部のマラソンランナーか。

 MHPSもマラソンで2時間8分台を持つ松村康平(31)を起用できるほど選手層が厚くなってきた。佐々木や松村ら、マラソンで代表歴を持つ選手がアンカーを走れば、見る側も最後までわくわく感を持って観戦できる。