旭化成、市田・村山ツインズに初の外国人選手加わる

 全日本実業団対抗駅伝(ニューイヤー駅伝)は1月1日、前橋市の群馬県庁前を発着点とする7区間(100キロ)で行われる。

 前回大会で18年ぶりの優勝を果たした名門・旭化成は、市田兄弟、村山兄弟の2組のツインズが今季も強力。初めて外国人選手も入社し、戦力アップして連覇を狙う。

 前回最長区間の4区区間賞を取った市田兄弟の兄の孝(25)が、今季もエースにふさわしい活躍を続けている。1万メートルで6月の日本選手権3位、9月の全日本実業団陸上は2年連続日本人1位を確保した。「1年前の区間賞は区間2位と1秒差でした。前回以上の走りをして、チームとしては圧倒的な力で連覇したい」と意気込む。4区で2年連続区間新を出していた設楽悠太(26=ホンダ)が、前回は区間13位と振るわなかった。今大会では設楽に対して市田がどんな戦いができるかが、旭化成の連覇に大きく影響しそうだ。

 5区は前回、村山兄弟の兄の謙太(24)が区間賞をマークし、ここでトップに立った。4区終了時には1位のDeNAとは17秒差の5位だったが、謙太が「おいしいところをもらった」と言えるくらい、走っていて余裕があった。今年は9~10月に体調不良が続いたが、12月の甲佐10マイルではチーム内3番手と復調。出場区間は未定だが「トップで来たら自分のペースで押して行き、2位以下で来たら前回と同じように、前半は目立たない位置で走ります」と、勝利へのイメージを描いている。

 市田兄弟の弟の宏(25)は前回、6区で区間1位。区間記録も更新した。6区は、前半区間にエース級やスピードランナーが起用されることもあり「つなぎの区間」と言われることもあるが、実は近年はこの区間で勝敗が決している。今年の宏は好調で、5000メートルの自己記録も更新した。「今回も6区かもしれませんが、兄弟そろっての区間賞は続けたい。それが兄弟の課題であり、本当の強さだと思います」と意識の高さを見せる。村山謙太も市田宏も、自分の区間で勝負を決めるつもりでいる。

 不安があるのは村山兄弟の弟の紘太(24)だろう。入社1年目の15年秋には、1万メートルの日本記録を更新。昨年はリオ五輪にも出場したが、今季は左脛骨(けいこつ)の疲労骨折で4~6月は走れず、レースに復帰したのは9月。11月の九州予選はBチームの1区で、苦手の向かい風ということもあって区間8位と低調だった。だが、12月に入って「練習に少しゆとり」が持てるようになったという。「日本記録を出したときと比べたらまだ“60”にも達していませんが、駅伝仕様で長い距離を走っています。今後トラックで活躍するためにも、ちょうど良いスタミナ練習になっている」と回復をアピールした。出場するとすれば前回と同じ1区だが、5000メートルと1万メートルで日本歴代2位を持つ鎧坂哲哉(27)と、ホープの茂木圭次郎(22)も1区候補として浮上している。層の厚い旭化成だからこそ、の状況だ。

 2組のツインズは前回と同じだが、今季の違いは外国人選手を採用したこと。2区終了時には20位前後が定位置だった旭化成が、今回は5位、悪くても10位以内で2区を終えるだろう。3区候補の大六野秀畝(25)は、例年よりも気持ち的にゆとりがあるという。

 外国人選手採用は練習でもプラス要素になっている。全日本実業団陸上で市田孝と大六野は、国内のライバルとの対決を意識せず、アフリカ勢の集団に食い下がった。その理由を市田孝は次のように話す。「どれだけ外国勢にチャレンジできるか、がテーマでした。以前は差を感じて気負っていましたが、外国人選手と一緒に練習するようになり、自分たちも挑戦できると思えるようになったんです」。

 22回の最多優勝を誇る旭化成。21世紀初の同チーム連覇が達成されたとき、伝統チームが新たな強豪に生まれ変わる。