ワコール、安藤加入でV好機/クイーンズ駅伝展望

全日本実業団対抗女子駅伝(クイーンズ駅伝)が24日、宮城県松島町文化観光交流館前~仙台市陸上競技場の6区間(42・195キロ)で行われる。3連覇を狙うパナソニック、大物新人・広中璃梨佳(19)が加入したJP日本郵政グループ、マラソンで強さを発揮している天満屋、MGC出場の安藤友香(25)が加入したワコールが4強と言われている。代表経験者4人を擁する資生堂、トラックのスピードランナーが多い豊田自動織機、予選会1位通過の積水化学もダークホース的な存在だ。

※出場区間は取材や戦力分析をもとに予想したもので、最終区間エントリーは大会前日(23日)に決定される

 

【1区(7・0キロ)】出遅れが許されない区間だ。

資生堂の木村友香(25)が1区に配置された場合は区間賞候補の筆頭になる。優勝した日本選手権を含め、4~6月の5000メートルで見せたラストスパートは、日本選手ではナンバーワンだろう。

3連覇を狙うパナソニックは、この区間で2年連続区間賞の森田香織(24)が有力。森田も得意のラスト勝負に持ち込みたい。

日本郵政の1区は新人の広中の可能性が高い。今年1月の全国都道府県対抗女子駅伝1区(6・0キロ)でも、実業団・学生選手を抑えて区間賞を獲得した。クイーンズ駅伝1区は上りが3回も続くが、広中自身は上りに苦手意識はない。

ワコールは3年前にこの区間で区間賞を取っている一山麻緒(22)天満屋は前回区間7位の谷本観月(24)と、この区間の経験選手が起用されそう。デンソーの倉岡奈々(22)豊田自動織機の福田有以(24)積水化学の松崎璃子(26)ら、スピードが武器の選手たちも登場しそうだ。

木村、森田のラストの強さを封じるには、他の選手は最初からハイペースに持ち込む必要がある。あるいはロングスパートで勝負に出るか。

 

【2区(3・9キロ)】距離的には2番目に短いが、ここで遅れると3区のエース区間への負担が大きくなる。

パナソニックはこの1年で大きく成長した森磨皓(19)の起用が濃厚だが、場合によっては森田香が2区の可能性もある。

天満屋は2年連続この区間を走ってきた西脇舞が大学院進学のため退社。2区でどれだけ踏みとどまれるかが、その後のレース展開に大きく影響しそうだ。

この区間でアドバンテージを持つのは豊田自動織機だ。前回区間賞の山本菜緒(23)が今年も全日本実業団陸上5000メートルで4位(日本人2位)と好調。2区で豊田自動織機がトップに立つ可能性は大きい。

 

【3区(10・9キロ)】最長区間に各チームのエースがそろう。

パナソニックは前回区間賞の渡辺奈々美(20)が2年連続で走りそうだ。昨年は「自分のペースで」走った結果、並走していたデンソーをすぐに振り切り独走した。独走になれば、自分のペースでグイグイ走るタイプ。渡辺のタスキを受ける位置次第では、昨年と同じくこの区間からの独走態勢に持ち込める。

日本郵政は鈴木亜由子(28)天満屋は前田穂南(23)の起用が濃厚で、マラソン東京五輪代表2人の対決が実現しそうだ。鈴木は元々スピード型で、トラック種目で世界陸上&五輪代表が3回ある。前田は対照的にスタミナ型だったが、昨年のクイーンズ駅伝は初めて3区を任され、区間5位ながらチームを2位に押し上げた。鈴木はスピードで圧倒してトップに立ちたいところ。対する前田は粘りの走りで4区の選手が前を追いやすい位置で中継したい。

資生堂はこの区間の区間賞を3回取った実績を持つ高島由香(31)の起用が確実。10月のプリンセス駅伝が6カ月ぶりのレースとなったが、3区(10・7キロ)を走り区間賞と18秒差の区間4位だった。クイーンズ駅伝までにさらに調子を戻してくるだろう。

ワコールは福士加代子(37)か安藤だが、今年は選手層の厚さでも勝負できるチームに仕上がっている。天満屋と同様、トップが見える差でとどめれば5区で逆襲ができる。

豊田自動織機の萩原歩美(27)ヤマダ電機の筒井咲帆(23)積水化学の佐藤早也伽(25)デンソーの荘司麻衣(25)大塚製薬の横江里沙(25)も区間上位候補だ。

多くのチームは3区でトップに立つことを考えているが、強力な外国人選手を持つチームはインターナショナル区間の4区で順位を上げることができる。資生堂と豊田自動織機はトップから20秒程度の差で中継すれば4区でトップに立てる。

 

【4区(3・6キロ)】最短区間で外国人選手の起用が認められている。

優勝候補のチームでは資生堂がダンカン・メリッサ(29)豊田自動織機がヘレン・エカレラ(20)と外国人選手を起用する。エカレラは昨年も区間賞を獲得。日本人トップには31秒差をつけた。このアドバンテージは大きい。メリッサも世界陸上ドーハ5000メートルのオーストラリア代表の実力を見せる。豊田自動織機も資生堂も、この区間で大きなリードを奪って逃げ切りをはかるプランだろう。

外国人選手のいないチームは、6番手の選手が走ることが多く、選手層の厚さが表れる区間だ。パナソニックは2連勝中も4区で差を詰められてきたが、今年は「克服できそう」と安養寺俊隆監督は自信を見せている。天満屋とワコールも今季は選手層が厚く、弱点区間にはならないはずだ。

 

【5区(10・0キロ)】今駅伝2つめの10キロ区間。アップダウンが続き大逆転も起こりうる区間だ。

前回区間賞はパナソニックの堀優花(23)と日本郵政の鍋島莉奈(25)が同タイムで分け合った。自分のリズムで走る単独走に強い堀と、上りに強い鍋島。2人が特徴を生かした結果だった。

4区までに大きく離されなければ、パナソニックか日本郵政が5区でトップに立つ可能性が大きい。

その2チームに個人の走力で対抗できるのは天満屋とワコールそしてダイハツだろう。天満屋は小原怜(29)が、昨年よりも好調な状態でクイーンズ駅伝を迎えられそうだ。ワコールは福士か安藤。2人ともマラソンランナーだが、スピードをマラソン強化の軸としているチームなので、駅伝でも力を発揮するだろう。

そしてダイハツは松田瑞生(24)を3区ではなく、5区に起用するプランがある。1万メートルでは17、18年と日本選手権を連覇した勝負強さが特長だが、負けん気が強すぎるのか、過去の駅伝3区で競り合ったシーンでは力みも目立った。

天満屋とワコール、ダイハツにも5区でトップに立つチャンスはある。

 

【6区(6・795キロ)】文字通り最終決戦の区間。

ワコールは前回大会で長谷川詩乃(20)が走り、区間2位の快走で7位から5位に順位を上げた。今年は安藤の加入で5区終了時点の順位が昨年よりも上がっている計算が成り立つ。24年ぶりの優勝の好機だろう。

ヤマダ電機は昨年まで3年連続、この区間の区間賞を取っている。5区までに上位につけていれば、逆転初優勝の可能性もある。

駅伝は先手を取った方が有利に働く。6区に強い選手を残す区間配置はなかなか難しい。実際に6区でのトップ交代劇は、08年大会を最後に起きていない。どのチームも5区終了時にトップに立っていたいと考えているはずだ。

だが今年のパナソニック、日本郵政、天満屋、ワコールの4強は、3本柱がしっかりしている。豊田自動織機と資生堂は4区に強力な外国人選手を起用する。メンバーを見る限り、4区までに決定的なリードを奪うのは難しいだろう。

勝負はおそらく5区。場合によってはアンカーまでもつれ込む可能性もある。

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